2026年4月14日に開幕した「ウォッチズ&ワンダーズ ジュネーブ」にて、IWCシャフハウゼンが発表した新作タイムピースを一挙に紹介する。今回の発表では、有人宇宙飛行のための新機構「バーティカル・ドライブ」を搭載した意欲作や、操作性を一変させた永久カレンダー「IWC-ProSet」の登場など、技術的な躍進が見られた。一方で、20周年を迎えた『星の王子さま』との記念モデルや、「インヂュニア」のラインナップ拡充も注目となる。

Text by Kento Nii
[2026年4月16日公開記事]
「パイロット・ウォッチ・ベンチュラー・バーティカル・ドライブ」Ref.IW328601
有人宇宙飛行に向けた革新的なツールウォッチ「パイロット・ウォッチ・ベンチュラー・バーティカル・ドライブ」が披露された。既存の航空時計の転用ではなく、ゼロからデザインされた本作は、宇宙空間での過酷な要求に応えるべく設計されており、世界初の商用宇宙ステーション「Haven-1」での採用に向けた公式認定を取得した意欲作である。

自動巻き(Cal.32722)。21石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約120時間。セラミック×セラタニウムケース(直径44.3mm、厚さ16.7mm)。10気圧防水。407万9900円(税込み)。
最大のトピックは、リューズを完全に排除し、特許出願中の回転式ベゼルシステムによってすべての機能を制御できる画期的な構造である。ケース側面に備わるロッカースイッチで機能を選択し、ベゼルを回すことで、「バーティカル・ドライブ」と呼ばれるクラッチシステムが巻真に動作を伝達。主ゼンマイの巻き上げやホームタイムの調整などを行える。これは、宇宙飛行士が船外活動(EVA)中に、加圧グローブを着用したままでも操作できるよう考慮されたものだ。

光の反射を抑えたマットブラックのダイアルは、必要最小限まで要素が削ぎ落とされている。一方で、本作は3針に加えて24時間針を持つ、いわゆるGMTモデルとして設計されている。この仕様は、宇宙ステーションが約90分で地球を一周し、1日に16回もの昼夜の繰り返しを経験する宇宙飛行士にとって、基準となる24時間のリズムを維持するために不可欠な要素となっている。また、時針を単独操作させることで、地球上の任意の時間をデュアルタイム表示することも可能だ。

搭載されるのは、新開発の自社製自動巻きムーブメント、Cal.32722だ。一体型のGMTモジュールを装備し、約120時間というロングパワーリザーブを誇る。ストラップは、優れた断熱性と紫外線耐性を備えたホワイトの一体型FKMラバー・ストラップが組み合わされ、セラタニウム製のピンバックルとともに、近未来的かつダイナミックなルックスを演出している。
「ビッグ・パイロット・ウォッチ・パーペチュアル・カレンダー・プロセット」
IWCを象徴する複雑機構のひとつ、永久カレンダーが、画期的な新機構「IWC-ProSet(プロセット)」の開発によって更なる進化を遂げた。

自動巻き(Cal.82665)。34石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約60時間。セラミックケース(直径42.9mm、厚さ14.3mm)。10気圧防水。631万4000円(税込み)。
自動巻き(Cal.82665)。34石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約60時間。SSケース(直径42mm、厚さ14mm)。10気圧防水。570万6800円(税込み)。
自動巻き(Cal.82665)。34石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約60時間。18KRGケース(直径42mm、厚さ14mm)。10気圧防水。819万7200円(税込み)。
IWCのパーペチュアルカレンダーは、1985年に時計師クルト・クラウスが開発した、月の長さの変化を自動的に計算し、4年ごとに閏日を追加する複雑機構がルーツとなっている。ブランドはこの機構を、完全に同期したホイール設計へと再定義することで、個別のプッシャーを一切必要とせず、リュウズの操作のみで日付を前後に調整可能という、永久カレンダーにおけるかつてない操作性を実現している。

これらの複雑なカレンダー・モジュールを駆動させるのが、自社製ムーブメントCal.82665である。約60時間のパワーリザーブを有するほか、双方向の巻き上げを行うペラトン自動巻き機構を搭載している。この機構には、負荷のかかるパーツには摩耗に強い酸化ジルコニウム・セラミックを採用しており、メンテナンス頻度を抑えられるメリットもある。

ラインナップは、素材やサイズ、ダイアルカラーが異なる3種が展開される。
直径42.9mmのホワイトセラミックケースモデルは、サンレイ仕上げのディープブルーダイアルを持ち、ホワイトのラバーストラップで純白の佇まいに仕上げられている。また、直径42mmのステンレススティールケースモデルは、同じくディープブルーダイアルを採用する。そして、直径42mmの18Kレッドゴールドケースに、ダークオリーブグリーンのダイアルを組み合わせたラグジュアリーな選択肢も用意される。
いずれのモデルも、トランスパレントバックから、その極めて精巧なメカニズムを鑑賞することが可能だ。

「ビッグ・パイロット・ウォッチ・パーペチュアル・カレンダー・セラリューム」Ref. IW505801
永久カレンダーを持つビッグ・パイロット・ウォッチに、画期的なセラミック素材をケースに流用した新作モデルが追加された。世界限定250本の希少なタイムピースである。

自動巻き(Cal.52616)。54石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約168時間(7日間)。セラリューム製ケース(直径46.5mm、厚さ15.9mm)。10気圧防水。世界限定250本。1105万600円(税込み)。
本作最大のトピックは、IWCのエンジニアリング部門「XPL」が長年の歳月をかけて開発した発光セラミック、「セラリューム」を用いたケースである。この素材は、セラミック粉末とスーパールミノバ顔料を均質に混合する高度な専用プロセスによって生み出され、一般的なセラミックス素材のような質感でありながら、暗所では神秘的な青みがかった光を放つ特性を持つ。本作では、この技術の採用によって、日中と暗所で、まるで異なる印象を与える前衛的なタイムピースに仕上げられている。

ダイアルには、1980年代にクルト・クラウスが開発した伝説的な永久カレンダー機構がレイアウトされている。4つのサブダイアルによって日付、曜日、月、ムーンフェイズが表示されるほか、7時と8時位置の間には4桁の西暦表示を備える。また、北半球と南半球の月相を示す「ダブルムーン」表示は、精密に計算された減速ホイールによって、577.5年でわずか1日しか誤差が生じない、高い精度を誇る。

直径46.5mmのケースに搭載されるのは、自社製ムーブメントのCal.52616だ。ペラトン自動巻き機構を備えており、約168時間というロングパワーリザーブを有する。なお、本作のリュウズおよび裏蓋のリングにはステンレススティールが使用されており、10気圧防水をはじめとする、実用的な耐久性も担保されている。
「パイロット・ウォッチ “プティ・プランス”」アニバーサリーエディション
アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリの遺族との20年にわたるパートナーシップを記念し、『星の王子さま』をモチーフにしたアニバーサリーエディションが一挙に発表された。IWCのパイロットウォッチの主幹をなす「マーク XX」「クロノグラフ」「オートマティック 36」という3つのモデルをベースとした、計5種のリファレンスがラインナップされる。
自動巻き(Cal.32112)。21石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約120時間。18KRGケース(直径40mm、厚さ10.1mm)。10気圧防水。326万3700円(税込み)。
自動巻き(Cal.32112)。21石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約120時間。SSケース(直径40mm、厚さ10.8mm)。10気圧防水。89万7600円(税込み)。
全モデルに共通するデザインコードとして、広大な宇宙を彷彿とさせるサンレイ仕上げのディープブルーダイアルが採用されている。そこに、暗所での視認性を高めるスーパールミノバが塗布されたゴールドメッキの針を組み合わせることで、物語を象徴する詩的な表情が作り上げられた。加えて、ダイアルと調和するブルーに仕立てられた、ラバーまたはカーフスキンのストラップが取り付けられている。
自動巻き(Cal.69385)。33石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約46時間。SSケース(直径43mm、厚さ14.8mm)。10気圧防水。116万7100円(税込み)。
自動巻き(Cal.69385)。33石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約46時間。SSケース(直径41mm、厚さ14.5mm)。10気圧防水。113万8500円(税込み)。

自動巻き(Cal.32102)。21石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約120時間。SSケース(直径36mm、厚さ9.9mm)。10気圧防水。83万2700円(税込み)。
「パイロット・ウォッチ・マーク XX」からは、18Kレッドゴールド製とステンレススティール製の2種が登場する。どちらも約120時間のパワーリザーブを誇るCal.32112を搭載しており、裏ぶたは『星の王子さま』のイラストがプリントされた特別仕様となっている。

「パイロット・ウォッチ・クロノグラフ」は、43mm径と41mm径の2サイズでの展開だ。いずれもコラムホイール式クロノグラフキャリバー69385を搭載する。なお、クロノグラフおよびマーク XXのストラップは、工具不要で容易に交換可能な「EasX-CHANGE」システムを備えている。
さらに、小ぶりな36mm径の「オートマティック 36」も用意されている。腕元にすっきりと収まるサイズ感でありながら、約120時間のパワーリザーブを備え、性別にとらわれず着用することができる。こちらも、ソリッドバックに『星の王子さま』の愛らしい姿が精巧にエングレービングされており、不朽の名作へのオマージュが感じられる。
「パイロット・ウォッチ・クロノグラフ 41 “プティ・プランス”」Ref.IW389410
『星の王子さま』をモチーフにした特別モデルの系譜に、ホワイトセラミックス製ケースを採用した新作クロノグラフが追加された。

自動巻き(Cal.69381)。33石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約46時間。セラミックケース(直径41.9mm、厚さ15.5mm)。10気圧防水。196万2400円(税込み)。
ダイアルには、広大な宇宙を彷彿とさせるディープブルーが採用され、カラーグラデーションを生み出すサンレイ仕上げが施されている。このダイアルと視覚的なコントラストを成すのが、同コレクション初の採用となるホワイトセラミックス製のケースだ。この先進的な素材は、ステンレススティールよりも軽量かつ硬く、傷がつきにくい特性を持つとともに、滑らかな質感を誇る。また、リュウズ、プッシュボタンといった操作部や、直接肌に触れる裏ぶたには、チタン素材が用いられた。

搭載されるのは、性能や信頼性に重点を置いて設計された自社製クロノグラフムーブメント、Cal.69381である。伝統的なコラムホイール式を採用しており、双方向ラチェット式自動巻き機構によって、約46時間のパワーリザーブが主ゼンマイに蓄えられる。

「ポートフィノ・オートマティック デイ&ナイト 34 “プティ・プランス”」Ref.IW459806
パイロット・ウォッチだけでなく、エレガントな「ポートフィノ」コレクションからも、『星の王子さま』をオマージュした初の特別モデルが登場している。

自動巻き(Cal.35180)。24石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約50時間。SSケース(直径34mm、厚さ8.9mm)。5気圧防水。108万9000円(税込み)。
本作では、コンパクトでタイムレスな直径34mmのステンレススティール製ケースに、サンレイ仕上げが施されたディープブルーのダイアルが組み合わされている。さらに、ゴールドメッキの針とアプライドインデックスが配され、コレクションのシグネチャーである端正な表情はそのままに、夜空を思わせるロマンチックな表情に仕立てられた。

また、ケースには、イタリアの革職人サントーニによる、手染めのブルーのアリゲーター・ストラップが組み合わされており、気品あるドレスウォッチとしての佇まいを見せている。さらにこのストラップは、容易に着脱可能なクイック交換システムと、バタフライフォールディングクラスプを有している。
ムーブメントは、約50時間のパワーリザーブを備えるCal.35180を搭載する。ケースの裏ぶたには、特別モデル共通の仕様である、『星の王子さま』の姿が刻印されている。
「インヂュニア・トゥールビヨン 41」Ref.IW345901
1970年代にジェラルド・ジェンタが生み出した傑作を再考して生まれた、“ラグスポ”チックなシルエットを特徴とする「インヂュニア」コレクション。その新たなフラグシップとして、フライングトゥールビヨンを搭載するコンプリケーションモデルが追加された。

自動巻き(Cal.82905)。25石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約80時間。18KRGケース(直径41.6mm、厚さ12.1mm)。10気圧防水。世界限定100本。要価格問い合わせ。
ハイライトとなるフライング・ミニッツ・トゥールビヨンは、1分間で1回転することで重力の影響を抑え、安定した高精度に寄与する。さらに本作は、トゥールビヨンのハック機構を備えており、秒単位での正確な時刻合わせが可能だ。加えて、そのアンクルとガンギ車には、摩擦を低減するダイヤモンド・シェル・テクノロジーが反映されており、ムーブメントのエネルギー効率も高められている。

ケース、ベゼル、一体型ブレスレットには、18Kレッドゴールドが採用され、複雑機構に見合う、華やかな外観に仕上げられている。また、各パーツによってサテンとポリッシュを使い分けることで、彫刻的な造形がいっそう際立たせられた。そのほか、ベゼルを固定するアイコニックなビスにも、通常のゴールド合金よりもはるかに硬度の高い「18ctアーマーゴールド」を使用するなど、徹底した輝きの追求が見られる。

搭載される自社製ムーブメントのCal.82905は、ペラトン自動巻き機構を備え、約80時間という実用的なパワーリザーブを有する。トランスパレントバックからは、コート・ド・ジュネーブ装飾が施されたブリッジや、「Probus Scafusia」のメダルがあしらわれたローターを鑑賞することができる。
「インヂュニア・パーペチュアル・カレンダー 41」Ref.IW344904
「インヂュニア」におけるもうひとつのフラグシップである、パーペチュアルカレンダーモデルに、軽量なチタン製ケースを持つ新バリエーションが追加された。

自動巻き(Cal.82600)。46石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約60時間。Tiケース(直径41.6mm、厚さ13.2mm)。10気圧防水。656万7000円(税込み)。
直径41.6mmのケースと一体型ブレスレットには、ステンレススティールに比べて約45%軽いグレード5チタンが採用されている。これにより、IWCの永久カレンダー搭載モデルにおいて、最軽量を実現している。また、表面仕上げは、サンドブラストをベースにポリッシュ仕上げが加えられており、重厚なグレートーンの外観に立体感が生まれている。

搭載するCal.82600は、577.5年に一度の調整で済むムーンフェイズを持ち、約60時間のパワーリザーブを有している。トランスパレントバックからは、ペラトン自動巻き機構のローターや、ペルラージュ装飾、ブルースティールのスクリューといった、複雑な機構や装飾を見ることができる。
「インヂュニア・オートマティック 42」Ref.IW338902
「インヂュニア」の42mm径モデルに、ダークオリーブグリーンカラーのセラミック素材を採用した新作が追加された。同コレクションにおけるカラーセラミックの採用は、本作が初となる。

自動巻き(Cal.82110)。22石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約60時間。セラミックケース(直径42mm、厚さ11.5mm)。10気圧防水。352万3300円(税込み)。
この奥深い色彩を放つセラミック素材は、ケースや一体型ブレスレットに対して、網羅的に使用されている。酸化ジルコニウムと他の金属酸化物を厳密な比率でブレンドして作られる本素材は、高硬度を誇るだけでなく、ステンレススティールよりも軽量であるため、手首への優れた着用感に寄与する。さらに、表面には丹念な仕上げが施されており、この素材を広く採用してきたブランドの、卓越した技術力がうかがえる仕様と言える。

セラミックによる部品の製造は、焼結の過程で部品が約3分の1に収縮するという特性を、設計段階から考慮する必要がある。本作では、ムーブメントのコンテナを必要としない、マルチパーツ構造を新たに採用することで、このセラミックの特性をカバー。さらに、薄いチタン製リングで、ムーブメントとビスを保持する手法によって、オリジナルのプロポーションを忠実に再現している。また、サファイアガラスとガスケットをケースや裏蓋リングに直接押し込むというアプローチも採られ、10気圧防水もそのまま引き継がれた。
内部には、自社製のCal.82110を搭載する。ペラトン自動巻き機構を備え、約60時間のパワーリザーブを有する実用的なキャリバーである。
「インヂュニア・オートマティック 35」
直径35mm、厚さ9.4mmのケースを備えるコンパクトな「インヂュニア」にも、新たなバリエーションが2種追加されている。

自動巻き(Cal.47110)。23石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約42時間。SS×18KRG(直径35mm、厚さ9.4mm)。10気圧防水。280万2800円(税込み)。
Ref.IW324911は、現行コレクションで初となる、ダイヤセッティングが施されたラグジュアリーなモデルだ。シルバーメッキのグリッドダイアルに、45個のホワイト・ダイヤモンドがセッティングされた18Kレッドゴールド製ベゼルが組み合わされ、エレガントな1本に仕上がっている。

自動巻き(Cal.47110)。23石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約42時間。SSケース(直径35mm、厚さ9.4mm)。10気圧防水。168万1900円(税込み)。
一方の「Ref.IW324907」は、IWCのシグネチャーカラーであり、1960年代後半の初期モデルにも見られたディープブルーをダイアルに採用している。いずれのモデルも、コンパクトながら、アイコニックな造形美が継承されており、性別にとらわれず愛用することができる。
ムーブメントは、既存モデルから引き続き、Cal.47110を搭載する。トランスパレントバックからは、ペルラージュやコート・ド・ジュネーブ仕上げ、ゴールドメッキのローターといった装飾が見られる。



