ウォッチズ&ワンダーズ ジュネーブ 2026で発表された、ヴァン クリーフ&アーペルの新作時計をまとめて紹介。天文コンプリケーション「ミッドナイト ジュール ニュイ ファーズ ドゥ リュンヌ ウォッチ」やデュアルタイム表示を備えた「ミッドナイト ユール ディシ エ ユール ダイヨール ウォッチ」など、個性的な新作が数多く登場した。

Text by Tomoyo Takai
[2026年4月16日公開記事]
「ミッドナイト ジュール ニュイ ファーズ ドゥ リュンヌ ウォッチ」
1929年にムーンフェイズ表示機能を搭載した時計を手掛けるなど、天文に関する時計製造に長い歴史を有するヴァン クリーフ&アーペルが、その系譜を「ミッドナイト ジュール ニュイ ファーズ ドゥ リュンヌ ウォッチ」で深化させた。本作は、2008年に誕生し、2024年に刷新されたジュール ニュイ コレクションを拡張するモデルであり、デイ/ナイト表示とムーンフェイズというふたつの複雑機構を統合している点が特徴である。

自動巻き。パワーリザーブ約36時間。18KWGケース(直径42mm)。予価2574万円(税込み)。6月発売予定。
直径42mmのホワイトゴールドケース内には、ブラックのムラーノ アベンチュリンガラス製ダイアルを採用。表示機構は2枚の回転ディスクで構成される。1枚は24時間周期で回転し、太陽と月の位置関係によって昼夜の移ろいを示すデイ/ナイト表示を担う。もう1枚は24時間16分27秒で回転し、月の満ち欠けを再現する。両ディスクは連動して作動し、結果として29.5日の周期に沿った月相の変化が、日々の時間表示と同期して視覚化される構造である。

さらに本作は、ケース側面のプッシャー操作によるオンデマンドアニメーション機構を備える。作動時にはダイアル全体が約10秒で360度回転し、昼間でも現在の月相を視覚的に確認可能とした。この機構においては、追加回転による精度誤差を排除するため、ディスク重量の軽減と摩擦低減が図られている。

装飾面では、ギヨシェ彫りやマザー・オブ・パール、エナメルなど多層構造を極薄で積層し、光の反射と透過による視覚効果を高めている。さらにケースバックには、月面視点で描かれた宇宙の表現を施し、機構と意匠の両面から天文学的な世界観を構築した。設計から約4年をかけて完成した、新たな天文コンプリケーションの大作の登場である。

「ミッドナイト ユール ディシ エ ユール ダイヨール ウォッチ」
デュアルタイム表示を備えた「ミッドナイト ユール ディシ エ ユール ダイヨール ウォッチ」は、複雑な表示機構と高度なエナメル技術を融合させた点が特徴である。異なる2地点の時刻を同時に表示する機構を、独自の表示構造と高度な装飾技法によって構築したモデルだ。

自動巻き。パワーリザーブ約65時間。18KRGケース(直径38mm)。予価825万円(税込み)。10月発売予定。
直径38mmの18Kローズゴールドケースには、新規開発の自動巻きムーブメントを搭載。約65時間のパワーリザーブを備え、ジャンピングアワーとレトログラード分表示を組み合わせた表示機構を採用する。文字盤上部の「ユール ディシ(ここの時間)」はローカルタイム、下部の「ユール ダイヨール(あちらの時間)」は第二時間帯を示し、ふたつのセクターギアにより2枚のディスクとレトログラード分針が同期して作動する。分針は60分到達時に瞬時に0へ帰零し、同時に時表示がジャンプする構造である。巻き上げ、時刻設定、両タイムゾーンの調整は単一のリュウズで操作可能とされ、操作性も考慮されている。

ダイアルは、ギヨシェ彫刻とエナメル装飾を組み合わせた多層構造を採用。ヴァン クリーフ&アーペルのひし形のホールマークを想起させるピケモチーフを基点とした放射状のギヨシェの上に、アンバーブラウンのエナメルを施し、光学的な変化を伴う色調を実現している。この色彩は、貴石の光学特性に着想を得て開発されたものであり、エナメル層の厚みと焼成条件によってシャトヤンシー効果(変彩効果)を制御している。
製造工程では、500度以下での長時間加熱後、1000度以上を含む複数回の焼成を経て気泡を除去し、その後、金型による手作業の成形を実施。吹きガラス技法の応用により、レリーフ状の立体表現と強度を両立させた。仕上げにはミラーポリッシュのゴールド下地を用い、反射特性を高めている。

「ルド シークレットウォッチ」
本作「ルド シークレットウォッチ」は、1934年に誕生したルド ブレスレットの意匠を継承しつつ、1949年モデルを再解釈したジュエリーウォッチであり、トロンプルイユの発想に基づく“ベルト”モチーフを特徴とする。

クォーツ。18KYGケース(縦49×横25mm)。30m防水。2653万2000円(税込み)。
ブレスレットは、イエローゴールド製の“ブリケット”リンクを手作業で組み立てた構造を採用。各リンクは精密に調整され、しなやかなメッシュ状に連結されることで高い装着性を実現している。外装は全面にミラーポリッシュ仕上げを施し、光の反射を最大化。リンク上にはサファイアをセットし、サイズに段階差を設けたグラデーション配置によって、三日月状のモチーフを形成している。
本作はシークレットウォッチ機構を採用し、バックル両側のプッシュ操作によりカバーが開き、文字盤が現れる構造である。文字盤にはギヨシェ彫刻を施したマザー・オブ・パールを用い、12時位置にはバゲットカットのサファイアをアワーマーカーとして配している。

使用されるサファイアは、メゾンの厳格な基準に基づき宝石鑑定士が選定。色調、透明度、カット品質の均一性が確保された石のみを組み合わせている。特にブルーの色域は統一されつつも、サイズグラデーションとセッティングにより発色の広がりを強調。イエローゴールドの地金との対比によって、光学的な深みと輝度を高めている。
「ペルレ ウォッチ」
「ペルレ」コレクションに加わった新作は、ブランドを象徴するゴールドビーズの意匠を核に、時計制作とジュエリー技術を融合したモデルである。

クォーツ。18KWGケース(直径23mm)。30m防水。380万1600円(税込み)。
ケースは18Kホワイトゴールド製で、外周を2列のポリッシュ仕上げのゴールドビーズが取り囲む構造を採用。丸みを帯びたフォルムと連続するビーズにより、光の反射効率を高めている。ベゼルにはダイヤモンドをパヴェセッティングし、フランジにも厳選されたダイヤモンドを配することで、外装全体の輝度を強化した。時刻調整用のプッシュボタンはケースバック側に配置され、外観上の要素を排除した設計となっている。
ダイアルにはミッドナイトブルーのアベンチュリンガラスを採用。ムラーノ島で製造されるこの素材は、約1200度で溶解したガラスに鉱物を加えることで微細な粒子を内包させ、独特の光輝を生み出す。冷却後に塊を切断し、薄層化したうえで均一な色調と光沢を得るために厳格な選別が行われる。本作ではさらに放射状のギヨシェ彫刻を施し、表面の微細な凹凸によって光の拡散と反射を制御している。

風防は緩やかなドーム型クリスタルとし、ダイアルの奥行き表現を強調。ストラップは交換式のアリゲーターを採用し、カラーバリエーションによる外観変更にも対応する。
「レディ ランコントル セレスト」
七夕伝説に基づき、織姫と彦星の出会いの瞬間をダイアル上に表現した「レディ ランコントル セレスト」は、ブルーを基調とした色調のもと、星降る夜空を背景に手を取り合う恋人たちの姿を描き出す。プリカジュール エナメルによる半透明の雲の奥にホワイトゴールド製の人物像を配置し、顔にはローズカットダイヤモンドを用いることで視覚的な焦点を形成している。互いを見つめ合う表情は明確に読み取れる構成とされ、ダイヤモンドをセットした月が光源として機能し、情景全体に柔らかな輝きを与える。

手巻き(Cal.Q474)。パワーリザーブ約36時間。18KWGケース(直径33mm)。30m防水。世界限定8本。3867万6000円(税込み)。
背景にはシャンルヴェ エナメルとグリザイユ エナメルを併用し、明暗差と遠近感を付与。さらにサファイアの三日月を配することで天体モチーフを補強している。加えてミニアチュール ペインティングにより、宝石を留めるビーズに至るまで彩色が施され、細部の完成度を高めた。「セッティング イン エナメル」によって宝石をエナメル層内に直接固定する構造とし、金属爪を排除することで透明感と光透過性を向上させている。ケースバックにはベガ、アルタイル、デネブによる夏の大三角がエングレービングされ、主題との連続性を持たせた構成である。

「レディ ルトロヴァイユ セレスト」
「レディ ランコントル セレスト」と同時に発表された「レディ ルトロヴァイユ セレスト」は、離れ離れとなった恋人たちの再会を待つ情景を主題とし、ピンクからモーヴへと連なる色調で構成される。モーヴサファイアの三日月を背景に、距離を隔てて立つふたりの人物像を配置し、恋しさから互いに腕を伸ばし合う姿を描く。両者の間にはホワイトゴールド製の鳥のモチーフが橋のように配され、隔たりと結びつきを同時に視覚化している。

手巻き(Cal.Q474)。パワーリザーブ約36時間。18KRGケース(直径33mm)。30m防水。世界限定8本。3867万6000円(税込み)。
背景はシャンルヴェ エナメルによって構築され、その上にプリカジュール エナメルによる雲やベールを重ねることで、高い透過性と層構造を形成。さらにエナメル内部にセッティングされたダイヤモンドが光を拡散し、情景に奥行きを与える。宝石は本作でも「セッティング イン エナメル」によって固定され、金属爪を用いない構造により光学効果を最大化している。複数回の焼成と研磨工程を経て、発色の均一性と金属輪郭の精度が制御されている。




