シチズンが展開する「カンパノラ」ブランドより、夜空に瞬く星の「光条(こうじょう)」をデザインテーマとする数量限定モデルが登場した。ブルーとブラックを基調とした2種が展開され、新たなデザインコードの採用によってミニマルな印象を備えながらも、表情に従来とは一風異なる奥行き感と躍動感が与えられることで、個性が際立つ腕時計に仕上がっている。

Text by Kento Nii
[2026年7月21日公開記事]
「光条」をテーマに、新解釈を加えた最新「エコ・ドライブ 限定モデル」
シチズンが展開するラインナップの中でも、“時を愉しむ、日常を愉しむ、個性を愉しむ”をテーマとする、個性豊かな「カンパノラ」。「宙空の美」というデザインコンセプトを軸に、空や宇宙、星々をテーマとした遊び心にあふれるタイムピースを多彩に取りそろえている。その2026年の新作として、星や太陽にまつわる「光条(こうじょう)」と呼ばれる現象をイメージに据えた、2種の数量限定モデルが登場した。

光発電エコ・ドライブ(Cal.8730)。フル充電時約6カ月駆動。SSケース(直径43.5mm、厚さ14.8mm)。日常生活用防水。限定250本。38万5000円(税込み)。2026年8月6日(木)発売予定。

光発電エコ・ドライブ(Cal.8730)。フル充電時約6カ月駆動。SSケース(直径43.5mm、厚さ14.8mm)。日常生活用防水。限定170本。39万6000円(税込み)。2026年8月6日(木)発売予定。
このふたつのモデルはカンパノラの中でも光発電エコ・ドライブを搭載するシリーズにあたる。複層的なレイアウトのダイアルとトリプルカレンダー機能の搭載を特徴としており、ダイアルの12時位置にポインターデイトのインダイアル、3時・9時位置にはそれぞれ月表示と曜日表示が備えられる。さらに、中央から6時位置にかけては、象徴的なカンパノラベルとムーンフェイズが配された、マザー・オブ・パールのインダイアルがあしらわれている。

なお、ここで言う光条とは、夜空の星や太陽といった強い輝度の光源を望遠鏡やカメラで視認した際、光の回折現象によって十文字や放射状に光の筋が伸びて見える現象を指す。新作では、この光の広がりを先述した多層ダイアルで表現するとともに、従来モデルにはない新たな試みとして、見返し部へサファイアクリスタルを採用。透明感と奥行き感を演出した表情となった。

ラインナップには、ブルーダイアルにゴールドのアクセントを組み合わせたブレスレットモデル(Ref.BU0020-71N)と、ダイアルやケース、ストラップに至るまでをブラックで統一したモデル(Ref.BU0024-02N)が用意される。前者は250本限定、後者は170本限定の販売となり、2026年8月6日(木)より展開される予定だ。以下より、これら新作に共通する特徴を深掘りしていく。

ミニマルになりながらも個性が際立つダイアル
今回の新作では、テーマである光条を表現するにあたって、ダイアルへ放射状のパターンがふんだんに盛り込まれている点がハイライトとなる。ベースとなるメインダイアル、12時位置のポインターデイトダイアル、そして中央から6時位置にかけてのマザー・オブ・パール部という3要素へ個別に仕上げが施されており、表情全体にしっとりとした光沢が満ちているのだ。
これらのパターンはいずれも異なる起点から広がっており、繊細な光の筋が幾重にも重なり合うことで、光条の神秘的な情景がグラフィカルに表現されている。特に、集中線のようにカンパノラのロゴからテクスチャーが広がるマザー・オブ・パールのダイアルは、素材由来の有機的な輝きやムーンフェイズも相まって、まず目に留まる象徴的な存在となっている。
さらに、本作のダイアルでは、モダンかつミニマルなデザインにすべく、細部まで再設計が図られている点にも注目したい。大きく開口していた従来モデルから、カレンダーディスクの開口部を当月および当日の曜日のみに留め、五徳リング上のスケールもアラビア数字を排したレールウェイミニッツトラックへと変更するなど、各要素のバランスを見直すことで、表情にいっそう洗練されたリズム感が生み出されているのである。

この新たなデザインコードはミニマルでありながらも、それぞれのモデルのメインカラーを際立たせており、加えて個性の確立にも寄与している。ブレスレットモデルでは、鮮やかなブルーのダイアルとゴールドのアクセントが織りなす王道的なコントラストが、いっそうシャープに引き立つ仕上がりに。一方、ストイックなオールブラックモデルでは、放射状パターンが細やかに浮かび上がる、宇宙を想起させる神秘的な佇まいを見せている。
存在感のあるパッケージングと、ダイアルの自由度を守るリングソーラーセル
外装面については、ケース径43.5mm、厚み14.8mmという、カンパノラらしい存在感のあるパッケージングが維持されている。数値だけを見ると大ぶりに感じられるかもしれないが、このゆったりとしたサイズ感こそが、多要素が重なる高密度なダイアルを窮屈に見せることなく、放射状に広がる光条のパターンを堪能できる好適なスケール感と言える。
また、従来モデルと同様に鏡面仕上げを主体としたエレガントなケースを特徴とし、ラグにかけて優美な曲線を描く造形が手元へのフィット感を高めている。さらに、風防には、光の反射を抑えるクラリティ・コーティングを施したデュアル球面サファイアクリスタルが採用され、ケースとの一体感と視認性の両立が行われている。
ちなみに、今回の新作も含めたカンパノラのエコ・ドライブシリーズでは、シチズン独自の光発電技術「エコ・ドライブ」の組み込み方式でも工夫が見られる。ダイアル下部にソーラーセルを配置する一般的なシチズンの時計と異なり、ダイアル外周に配したソーラーセルによって発電を行う「リングソーラーセル」を採用することで、電気鋳造やマザー・オブ・パールへの彫刻を凝らした複雑なダイアルの意匠を損なうことなく、定期的な電池交換を必要としない利便性の高さを実現しているのだ。

搭載されるCal.8730は、トリプルカレンダーに加え6時位置のムーンフェイズ表示に至るまでのすべての機能のエネルギーを、このリングソーラーだけで賄っている。フル充電時には約6カ月にわたる駆動を可能としており、時計市場で光発電技術をリードしてきた、シチズンの技術派な一面が垣間見える仕様と言える。
まとめ
今回の限定モデルは、確かにカンパノラらしい個性が与えられているものの、独自の世界観を強く前面に押し出していた従来機とは異なり、シンプルな印象を受ける。しかし、要素を大胆に削ぎ落としたこの新たなデザインコードこそが、かえってカンパノラの強みである立体的なレイアウトやディテールの緻密さを純粋に引き立てており、プロダクトとしての完成度が突き詰められているように思えた。
また、こうしたシンプルなデザインは、日々のワードローブに取り入れやすいだけでなく、テーマがダイレクトに伝わりやすいため、これまでカンパノラに触れてこなかった時計ユーザーにもリーチしやすいというメリットもあるだろう。光条というロマンチックなテーマを中心としつつ、コレクションに新たなミニマリズムの魅力を加えた本作のデザインコードだが、限定作に留まらず、今後のレギュラーモデルにおける展開にもぜひ期待したい。




