街角で時計ユーザーに、着用時計をインタビューする企画。その時まとっているモデルの購入理由や思い入れを語ってもらう。今回は、節目の年齢を前に思い切って購入したというグランドセイコー「エレガンスコレクション」Ref.SBGX349を所有する、にぼしさんが語り手だ。

Photograph & Text by Chieko Tsuruoka(Chronos-Japan)
[2026年10月28日公開記事]
自身の誕生年に開発されたムーブメント
「時計愛好家」と聞くと、多くの読者が男性を思い浮かべるかもしれない。実際、時計市場、とりわけ高級時計となると男性ユーザーが多く、また、各社のラインナップも男性向けのものが売り場の大きな面積を占めている。
しかし今回、東京・表参道で取材に応じてくれた「にぼし」さんは女性の時計愛好家だ。なお、筆者をはじめ、小誌編集部のメンバーとも元々親交がある。彼女の年齢は20代で、そのフェミニンな装いや控えめな話し方は、我々がイメージする時計愛好家とはちょっと異なる人物像かもしれない。しかし、そのコレクションはもちろん、時計への情熱や知識量は、熟練の時計愛好家そのものだ。
そんな彼女が時計に興味を持ち始めたのは2024年の初め頃とのことだ。本格的に時計好きとなってからの1本目として、ロンジンの「ロンジン マスター コレクション」を購入。ノンデイトかつスモールセコンドという、時計愛好家好みの意匠を備えた1本である。1本目からすでに通好みなチョイスもさることながら、さらに驚かされるのが、昨年、ウオッチコーディネーター検定(CWC)を取得したことだ。CWCは時計の販売従事者向けに、日本時計輸入協会が主催する検定資格であり、販売に関する知識のみならず、時計そのものの歴史や取り扱い、あるいは技術について身に付けていることが求められるため、時計愛好家の腕だめしとしても好適な資格となっている。とはいえ、まだ時計好きになったばかりで、受験前に初めて対面した際、「時計については、まだまだ勉強中なんです」と謙遜していた彼女が、CWCを受験して、しかも一発合格したことに敬服させられた。
そんな彼女から筆者に、2026年7月、一通のメッセージが届いた。「鶴岡さん、私、グランドセイコーを買ったんです」。
その3カ月後となる今回、取材したのは、連絡をもらったそのグランドセイコーの「エレガンスコレクション」Ref.SBGX349だ。
2年越しの思いを実現

クォーツ(Cal.9F61)。年差±10秒。SSケース(直径34.0mm、厚さ10.7mm)。日常生活用防水。生産終了。
「初めてこの時計を見たのは、2年前でした。時計仲間のFUSE(ヒューズ)さんと、銀座の和光に行った時に初めて出合って、それからずっと欲しい時計になったんです。でも、『自分自身には(グランドセイコーは)まだ早いかな』と思い、購入には至りませんでした。当時は機械式に興味があったので、クォーツということにピンとこなかったという理由もあります」
なお、にぼしさんは昨年、別のブランドの腕時計を迎えている。間をおかずに、約2年越しにグランドセイコーを購入するに至ったのはなぜだろうか?
「7月に(時計販売店の)THREECさんのイベントで、再びこのグランドセイコーを見たんです。そこで、生産が終了することを知りました。だったら買わなきゃって。また、THREECさんで、このモデルに搭載されているムーブメントのCal.9F61は、1997年が初出ということを知りました。私も1997年生まれなんです。“バースイヤーウォッチ”ならぬ、“バースイヤームーブメント”だったことは、大きな決め手になりました。だから、私は今年29歳になったのですが、『ちょっと早い30歳の節目の記念時計』と思うことにしちゃいました(笑)」
彼女は購入した後の筆者へのメッセージで、「未来を見据えてお迎えしました。今よりも、このグランドセイコーが似合うレディーになれるよう邁進しようと思います」とも語っていた。というのも、前述の通り、彼女の中ではグランドセイコーは「まだ自分には少し早く、大人が着用する腕時計」と考えていたためだ。しかし、彼女のフリルの付いたカーディガンからのぞくネイビーの文字盤は彼女の雰囲気にとても似つかわしく、また、グランドセイコーらしい輝きも、彼女の手元でいっそう映えているように感じられた。



