【インタビュー】パルミジャーニ・フルリエ CEO「グイド・テレーニ」

FEATURE本誌記事
2021.04.26

前号に続いて、パルミジャーニ・フルリエのCEOを掲載するのには理由がある。「トンダ GT」コレクションを手掛けた前CEOのダビデ・トラクスラーが記事掲載を前に退任し、新しいCEOが着任したからだ。名前はグイド・テレーニ。本誌の読者ならば、周知の人物である。ブルガリ時計部門でディレクターを務め、同社の垂直統合を推し進めた彼が、まさかパルミジャーニに移るとは思ってもみなかった。

広田雅将(本誌):取材・文 Text by Masayuki Hirota (Chronos-Japan)
[クロノス日本版 2021年5月号 掲載記事]


私にとっての成功は、本物の時計のニーズを広げること

グイド・テレーニ

グイド・テレーニ
パルミジャーニ・フルリエCEO。1969年、イタリア生まれ。ルイージ・ボッコーニ大学を卒業後、1995年にダノングループでキャリアをスタート。2000年、スイスに移住し、ブルガリ グループのウォッチメイキングディビジョンへ参入。同社の垂直統合やリブランディングを推し進めた後、2010年からはブルガリ・オルロジュリのプレジデントに就任した。2021年1月より現職。曰く「最も目の肥えた時計愛好家たちの目を引きたい」。

「20年以上にわたってミシェル・パルミジャーニとは面識があった。本当に、彼からは多くを教わったよ。例えば、Dバックル。なぜ使わないのか、とミシェルに聞いたことがある。対して彼は『Dバックルでどうやってムーブメントを見るんですか?』と答えた。彼のやることには理由がある」

 創業以来、ニッチであることを良しとしてきたパルミジャーニ・フルリエ。新しい「トンダ GT」コレクションは、そういったイメージへの一石、と言えなくもない。

「パルミジャーニというのはやはりニッチなブランドだと思う。ただ、存在感を出す必要はある。色といったもので、新しい息吹を吹き込みたい。しかし、長く楽しめる色であること」。テレーニが就任1日目から模索しているのは、パルミジャーニ・フルリエの新しいスタイルであるらしい。

「この数カ月、何がパルミジャーニ・フルリエらしさなのかを考えている。確かに、高級時計の流れはカジュアルやスポーティーに向かっている。ただし、いっそう重要なのは、ブランド力だろう。私の思う成功とは、カジュアルな時計を作るのではなく、パルミジャーニのような本物の時計のニーズをいっそう広げていくことだ。トレンドを追うのではなく、フォロワーを作っていくこと。幸いにも、パルミジャーニはニッチでエクスクルーシブだが、分かっているお客様に恵まれている」。難しい歩みではあるが、彼には勝算があるのだろう。

 もうひとつ聞きたかったのは、ディストリビューションだ。パルミジャーニは、オンライン化とブティック化はしないというスタンスで、販売店の信頼を得てきた。いきなり変えたら信頼は失うだろう。

「パルミジャーニ・フルリエという時計は知識がないと扱えないと思っている。だから販売戦略は今後も変える予定はないし、ディストリビューションを守っていきたい」

 就任からわずか2カ月のCEOに、大きな答えを期待するのは酷だろう。しかし、テレーニは自分なりの答えを持っているようだ。「数カ月後に、私の思うパルミジャーニのモデルが出てくる」。彼がパルミジャーニで何をしたいのかは、そのモデルを見て判断することにしたい。

トンダ GT

パルミジャーニ・フルリエ「トンダ GT」
パルミジャーニ・フルリエが新しくリリースした野心作。ケースにインテグレートされたブレスレットまたはストラップを備えるほか、高い耐衝撃性とパルミジャーニらしい上質な外装を持つ。文字盤も本物のギヨシェである。自動巻き(Cal.PF044)。33石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約45時間。18KRG(直径42mm、厚さ11.2mm)。100m防水。世界限定150本。315万7000円(税込み)。



Contact info: パルミジャーニ・フルリエ Tel.03-5413-5745


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