パテック フィリップ/ 永久カレンダー搭載クロノグラフ

FEATUREアイコニックピースの肖像
2020.01.21

Perpetual Calendar CHronograph [Ref.3970]

ヌーヴェル・レマニアを搭載する初期モデル

永久カレンダー搭載クロノグラフ Ref.3970

永久カレンダー搭載クロノグラフ Ref.3970
1986年初出。搭載するCal.CH 27-70 Qは、レマニア(後にヌーヴェル・レマニア、現ブレゲ)製のクロノグラフエボーシュ、Cal.2310をモディファイしたベースムーブメントに、当時最新の永久カレンダーモジュールを重ねたもの。これはスクリューバックケースを持つセカンドシリーズ。手巻き。23石。1万8000振動/時。パワーリザーブ約60時間。18KYG(直径36mm)。2.5気圧防水。個人蔵。

 1986年のバーゼルフェア(現バーゼルワールド)で発表された永久カレンダー搭載クロノグラフが、このRef.3970/3である。このモデルは、85年まで生産されていたRef.2499の後継機にあたる。しかし永久カレンダーの設計では、2499との間に共通点はほとんどなく、むしろ前年に製造が始まった「新しい」永久カレンダー搭載自動巻きのRef.3940に近い。パテック フィリップにとって、Ref.3970とは新世代の永久カレンダー搭載クロノグラフであった。

 2004年末に生産が終了するまで、3970は18年の長きにわたって製造された。主なバージョンは3つに分けられる。1986年のファーストシリーズ、86年から91年(異説あり)まで製造されたセカンドシリーズ、そして2004年末まで生産されたサードシリーズこと、3970Eである。大きな違いはケースで、ファーストはスナップバック、セカンド以降はスクリューバックに改められた。なおセカンドはソリッドバック、サードはトランスパレントバックと考えられているが、セカンドにもトランスパレントバックのモデルがあったし(Ref.3971)、サードにはソリッドバックケースが用意されていた。強いて両者の違いを挙げるならば、スクリューバックの噛み合い部だろう。サードモデルからは噛み合いが深くなり、実用上の防水性能が高まっている。サードシリーズのみ、フランス語で防水を意味するEtanCHeと銘打った理由も分からなくはない。

 2499の意匠を受け継ぎつつも、より使える時計となった3970。今もってこの時計を探している好事家が多いのも、頷ける話だ。とりわけファーストの造形をほとんどそのままに、防水ケースに改められたセカンドシリーズ以降は、もっとも好ましい複雑時計のひとつと言って、過言ではないだろう。

(左上)Ref.2499とほぼ同形状のケース。ケースサプライヤーは、おそらくジャン-ピエール・ハグマン、あるいは1975年からパテック フィリップにケースを収めたアトリエ・レユニ。おそらくは後者だろう。ラグの後付け加工が見て取れる。
(右上)ファーストシリーズとセカンドシリーズの大きな違いは、曜日と月表示の書体。ファーストに比べてかなり太い。なおサードモデルのRef.3970Eは、インデックスが三角形に改められた他、長短針もダイヤモンドカットのバトン針に変更された。針の質だけをいえば、セカンドモデルまでが最良だろう。
(中)ケース側面。形状はサファイアクリスタル風防を持つRef.2499/100に酷似しているが、ベゼルの高さはかなり抑えられた。
(左下)金板をサテン仕上げした後に、銀メッキを施した文字盤。ファーストはツートーン、セカンドは単色、サードモデルのRef.3970Eはクリア仕上げではなく、表面を若干荒らした文字盤を持つ。なお金板を彩色したムーンフェイズは、すべてのモデルに共通である。
(右下)セカンドシリーズの特徴であるスクリューバック。最終型のRef.3970Eに比べると、裏ブタをねじ込むためのフランジはかなり浅い。カタログ上の表記はさておき、実際の防水性能はあまり高くなかったと推測される。