巻き上げ機構 第5回「パワーリザーブ Part.1」

FEATURE時計機構論
2017.03.17

パネライ
“リニア式”パワーリザーブ表示という独自の方式を採用する「ルミノール 1950 エイトデイズ GMT オロロッソ 44mm」。手巻き、3バレルで約8日間駆動する自社ムーブメントCal.P.2002では、主ゼンマイを収める香箱上に配置された歯車の回転がそれと噛み合う直線状の櫛歯(ラック)を左右に動かし、櫛歯にセットされたパワーリザーブ針が水平に移動する。
菅原 茂:文
Text by Shigeru Sugawara

 ここまで機械式ムーブメントの動力源となる主ゼンマイについて、「手巻き」と「自動巻き」について述べてきた。これらの巻き上げを主ゼンマイへのエネルギーチャージ、つまりインプットと解すれば、アウトプットは、巻き上げられた主ゼンマイから放出されるエネルギーだ。それによって時計がどれほど動き続けるかは、基本性能を判断する上で一つの参考になる。身近な例でいえば、自動車の燃費、スマートフォンならバッテリー駆動時間といったところだろうか。

 機械式時計の仕様に「パワーリザーブ40時間」といった表記にあるこの「パワーリザーブ」がまさにそれに当たる。英語の「パワーリザーブ」とは読んで字のごとく、パワーは動力、リザーブは蓄積、保存という意味。難解な言葉遣いが多い時計の専門用語の中では分かりやすい。

 パワーリザーブを表現する一般的な単位は、今述べた40時間のような時間数あるいは8日間といった日数を用いる。この40時間を例にするなら、まず香箱の主ゼンマイをいっぱいまで完全に巻き上げた状態にしておりて、時計を動かし始めると、ゼンマイが解け、停止するまでに40時間は連続して動くわけである。この数字が大きくなれば、それに比例して連続作動時間も長くなる。