GMT機構 第5回「ワールドタイム Part.2」

FEATURE時計機構論
2017.06.12

ヴァシュロン・コンスタンタン
「トラディショナル・ワールドタイム」

ヴァシュロン・コンスタンタンは、1932年に世界主要31都市の時刻を24時間表示する懐中時計ワールドタイム「モデル3372」を初めて発表しており、この分野の先駆者でもあった。そうした歴史遺産を背景にして2011年に発表されたのがこの腕時計。世界37のタイムゾーンに通常の1時間の「時差」のみならず、30分や15分の「分差」がある都市や地域(ダイアルに赤で表示)までも含むのが大きな特徴で、また地球の各地の昼夜表示も独特だ。自動巻き(Cal.2460 WT)。27石。2万8800振動/時。PG(直径42.5mm)。

ヴァシュロン・コンスタンタン
「オーヴァーシーズ・ワールドタイム」

左モデルと同ムーブメント、同機能が備わる新世代の「オーヴァーシーズ」(2016年発表)。世界に目を向け、あまねく旅することがテーマの「オーヴァーシーズ」には、ワールドタイム機能がうってつけ。「分差」の都市(地域)名は、テヘラン、カブール、ネパール、デリー、ヤンゴン、ユークラ、アデレード、ロードハウ、キングストン、ワイタンギ、マルケサス、カラカス、セントジョーンズの13。自動巻き(「オーヴァーシーズ」仕様のCal.2460 WT/1)。27石。2万8800振動/時。SS(直径43.5mm)。SS製ブレスレットとラバーストラップ付属。


 しかしそれに敢えて挑んだのがヴァシュロン・コンスタンタンだ。ワールドタイム機能を搭載する2011年発表の「パトリモニー・トラディショナル」(現在は「トラディショナル・ワールドタイム」に改名)や2016年発表の「オーヴァーシーズ」では、この問題をシンプルかつスマートに解決している。いずれも世界37の都市名の時刻表示に特色があるが、この37については、24タイムゾーンの主要都市名とともに、30分差のデリー、カラチ、カラカス、15分差のネパールなど13を含む数字である。

 ダイアルからは見えないが、都市設定用の回転リングの内周に時差に対応する37個のノッチが刻まれており、ノッチはワールドタイムにふつうにある1時間間隔のものが24個、ところどころに30分および15分間隔のものが置かれている。後者がまさにこのワールドタイム機構の核心だ。使い方も簡単である。まずセンター針でメインの時刻を表示する都市を選び、次に都市リングを調整して該当都市名を6時位置の三角マーカーに合わせる。これで、機構の爪がその都市のノッチに食い込んで設定完了。たとえばネパールを選んだら、15分差をカウントした時刻表示にセットされるという仕組みなのだ。