ダイバーズウォッチ第4回「 国産メーカーのダイバーズウォッチ」

FEATURE時計機構論
2017.09.23

セイコー「飽和潜水仕様600mダイバーズ」
1975年に発売された国産ダイバーズウォッチの最高峰。150m、300m、600mへと倍々に防水性能を向上させてきたセイコーは、このモデルで初めて外胴プロテクターをもつ二重構造のケースを開発。素材のチタンも画期的だった。ムーブメントは自動巻き。25石。3万6000振動/時。完成度の高い基本設計は現行品にも受け継がれた。

セイコー「プロスペックス マリーンマスター プロフェッショナル」
「飽和潜水仕様600mダイバーズ」の伝統を受け継ぐ現行の1000m防水飽和潜水用ダイバーズ。純チタンケースで、外胴プロテクター素材にジルコニアセラミックスを採用。安全性を高めたトリプルセーフティ回転ベゼル、残光時間の長い新開発のルミブライトなども特徴。ムーブメントは自動巻き(CAl.8L35)。26石。2万8800振動/時。


 1970年代に入り、ダイバーズウオッチの記念碑とも呼ぶべき傑作がセイコーから登場する。1975年に発売された「飽和潜水仕様600mダイバーズ」である。何より画期的なのは、ケース構造と素材。飽和潜水仕様のこの600mダイバーズウォッチが独特なのは、「ツナ缶」という愛称もある特殊な二重構造のケースに軽量で腐食に強いチタンを使い、外側を外胴プロテクターで保護しているところ。チタンの採用も外胴プロテクターの構造も世界初なのだった。同社の説明には「世界最高峰の水密性・気密性・耐食性、耐擦傷性などの耐久性能が盛り込まれた画期的なモデル」とある。そして、蛇腹式ポリウレタンバンドなど、外装のみで実に20件の特許を有しているからすごい。

「飽和潜水仕様600mダイバーズ」のムーブメントについても特色がある。搭載されていたのは、1968年のモデルと同じく10振動ハイビート自動巻きムーブメントだ。一連のダイバーズウオッチの開発製造を手掛けたのは諏訪精工舎で、この10振動ムーブメントには「グランドセイコー」で確立した技術が受け継がれていた。画期的な外装構造のみならず、内部のムーブメントについても、同社が誇る世界最高をここに凝縮した感がある。当時の腕時計としては、まさに並ぶ者なき“最強”だった。

 今や伝説となった「飽和潜水仕様600mダイバーズ」の系譜は、現在まで途切れることなく続いている。1978年には10振動ハイビート自動巻きをクォーツに置き換えた飽和潜水用600m防水ダイバーズが誕生。1986年には世界初のセラミック製の外胴プロテクターを採用する飽和潜水用1000m防水ダイバーズへとさらに進化。また2013年にはスプリングドライブを搭載する飽和潜水用600m防水ダイバーズも仲間入りした。

 現行の「プロスペックス マリーンマスター プロフェッショナル」コレクションに含まれる外胴プロテクター付きダイバーズウォッチには、スプリングドライブ600m防水、自動巻き1000m防水モデル、クォーツ300m防水の3タイプがあり、世界のプロダイバーはもちろんだが、潜水用途ではなく、タフな造りやユニークなデザインが気に入って使う人も増えている。