【80点】タグ・ホイヤー/カレラ 1887 クロノグラフ

FEATUREスペックテスト
2011.05.03

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ソリッドな設計のバックル。
実用的で操作が簡単、かつ、堅牢なセーフティープッシュボタンバックル。

装飾と精度

ムーブメントは320点の部品で構成されており、魅力的な装飾が施されている。トランスパレントバックからは、受けとローターに施されたコート・ド・ジュネーブやペルラージュ模様、ポリッシュ仕上げのネジ、また、T字型の部品と半円を描く分銅で出来た多分割型ローターを鑑賞することができる。ポリッシュされたレバーの中には、ルーペを使わないと仕事の跡を確認できないものもあるが、ムーブメントは全体的にETA7750よりもはるかに美しく仕上げられている。
精度もなかなか優秀である。着用テストでは、プラス0・5秒/日というごくわずかなプラス値が観察されただけである。クロノスドイツ版編集部にある最新式の歩度測定機、ウィッチ製クロノスコープX1で行ったテストでは、平常時の平均日差がプラス2秒/日、最大姿勢差は5秒と、優秀な数値を見せてくれた。クロノグラフを作動させた場合は、平均日差がプラス1・8秒/日だったのに対して、最大姿勢差は8秒と、平常時に比べても遜色ない結果であった。テンプの振り落ちは垂直姿勢でかなり顕著に見られ、この傾向はクロノグラフ作動時も同様だった。だが、313度(水平姿勢、平常時)から250度(垂直姿勢、クロノグラフ作動時)という結果に比べ、ETA7750の振り落ちが特別に小さいというわけではない。

良好な精度と同時に求められるのは、最良の視認性である。この点で、カレラ 1887 クロノグラフはオリジナルモデルには及ばない。時・分針がクロノグラフカウンターを囲むリングと同じくらいの幅で、色も同じシルバーであることから、しっかりと確認しないと時刻を把握するのが難しく、夜光塗料の塗布量が少ないために、暗所での読み取りもやや困難である。針はまだ認識できるものの、インデックスの先端に配された発光ポイントはよく探さないと見えず、12時位置の夜光インデックスが他の時間とあまり変わらない形をしているため、瞬時に時計の向きを確認することが難しい場合がある。他方、計測時間は読み取りやすい。夜間は何も見えないが、日中はシルバーカラーの針とブラックダイアルのコントラストが良好である。積算分針は持続的に運針するのではなく、1分刻みにステップしながら進む。
大型の文字盤と大きな風防も視認性に貢献しており、直径41mmのケースを実際よりも大きく見せる効果がある。一方、ケースの厚さは15・55mmという堂々たるものだが、下方に伸びたラグや、ケースサイドに向かって傾斜をつけたケースバック、そして、隆起したベゼルなどで、この厚さは巧みに隠されている。先代モデルと同様にタキメーター表示が与えられるはずだったベゼルは、発売の直前になって変更された。タキメーター表示が配されていたならば、時計はもっと厚く見えていたことだろう。実際の販売モデルでは、サテン仕上げのタキメーターベゼルがなくなったため、ケースには全体的にポリッシュが掛けられることになった。だが、ファセットされたラグやプッシュボタン、そして、上からかぶせたベゼルによって、ケースの面は十分に分割されている。また、プッシュボタンは頭部がフラットになり、ボタンガードが装備された。さらに、プッシュボタンは堅牢な仕上がりで、ケースとの遊びも少なくなった。これは、ねじ込み式ではないリュウズにも当てはまる。

バックルも非常に頑丈に作られており、ソリッドな設計ながらも、ふたつのセーフティープッシュボタンで簡単に開くことができる。ダブルフォールディングバックルとは異なり、このバックルにはヒンジがひとつしかないことから、閉じるのも非常に楽である。デザイン的には特に精巧な印象は与えないが、加工は入念である。ブレスレットは加工品質が高いものの、どちらかと言えばシンプルな構造で、ネジではなくピンでコマが留められている。5連ブレスレットは、サテンとポリッシュのコンビ仕上げが美麗だが、ケースとの関連性が見当たらない。また、着用時に手首の毛が少し挟まるのが気になったが、この点を除けば装着感はいたって良好である。ブレスレットとケースには一部、鋭いエッジがあるが、装着感を損なうほどではなかった。
新型のカレラは、ステンレススティールブレスレットのモデルで43万500円である。品質を考慮すれば適正な価格であり、コラムホイールを備えた独自のクロノグラフムーブメントを搭載した時計となれば、むしろ手頃なほうではないだろうか? カレラ 1887 クロノグラフの最大の武器はもちろん、搭載キャリバーと押し心地の軽いプッシュボタンである。そればかりか、非の打ち所のない操作性、良好な精度、また、快適な装着感によって、ユーザーの期待に十分応える時計であり、大きな弱点は特に見当たらない。新型エンジンを搭載して好スタートを切った新型カレラ。その前に立ちはだかるものは何もないのだ。

技術仕様
タグ・ホイヤー/カレラ 1887 クロノグラフ

製造者: タグ・ホイヤー
モデル: Ref.CAR2110
機能: 時、分、秒(ストップセコンド仕様)、日付、12時間・30分・60秒積算計を備えたクロノグラフ
ムーブメント: キャリバー1887、自動巻き、2万8800振動/時、39石、耐震軸受け(キフ使用)、グリュシデュール製テンワ、偏心ネジによる緩急調整、パワーリザーブ約50時間、直径29.3mm、厚さ7.13mm
ケース: SS製、ドーム型サファイアクリスタル(両面無反射コーティング)、ねじ込み式トランスパレントバック、100m防水
ストラップとバックル: SS製ブレスレットおよびSS製セーフティープッシュボタンバックル
サイズ: 直径41mm、厚さ15.55mm、総重量160g
バリエーション: アリゲーターストラップおよびSS製セーフティープッシュボタンバックル(43万500円)
価格: 43万500円

*価格は記事掲載時のものです。記事はクロノス ドイツ版の翻訳記事です。

精度安定試験 (日差 秒/日、振り角)

平常時 クロノグラフ作動時
文字盤上 +4 +4
文字盤下 +4 +4
3時上 +1 0
3時下 +2 +3
3時左 -1 -4
3時右 +2 +4
最大姿勢差: 5 8
平均日差: -2 -1.8
平均振り角:
水平姿勢 313° 284°
垂直姿勢 279° 250°

評価

ストラップとバックル(最大10pt.) 7pt.
操作性(5pt.) 5pt.
ケース(10pt.) 8pt.
デザイン(15pt.) 12pt.
視認性(5pt.) 3pt.
装着性(10pt.) 8pt.
ムーブメント(20pt.) 16pt.
精度安定性(10pt.) 8pt.
コストパフォーマンス(15pt.) 13pt.
合計 80pt.