ウォッチズ&ワンダーズ ジュネーブ2026でロレックスがリリースした、新作の「オイスター パーペチュアル コスモグラフ デイトナ」Ref.126502。スペックやコレクションとしてのスタイルはそのままながら、明らかに新しいと言うべきモデルとなった本作の、その“新しさ”をひもといていく。
Text by Chieko Tsuruoka(Chronos-Japan)
[2026年4月22日公開記事]
ロレックスの新作モデルの傾向とデイトナRef.126502

2026年4月14〜20日までの1週間にわたって、スイス・ジュネーブで開催されたウォッチズ&ワンダーズ ジュネーブ。例年広いスペースで出展しているロレックスは、今年もこの見本市で新作時計を発表した。
近年は「1908」や「オイスター パーペチュアル ランドドゥエラー」といった新コレクションを発表しているものの、既存のものに関しては従来のデザインから大きく変えず、ディテールや性能のアップデートが目立つというのがロレックスの新作の傾向だ。例えば「オイスター パーペチュアル コスモグラフ デイトナ(以下デイトナ)」は2023年にコレクション全体でリニューアルしたが、前世代のブラックセラクロム製ベゼルやケース・ブレスレットの造形をはじめ、デザインは大きく変えられなかった。
2026年も、その傾向は引き続き踏襲されていると見られる。「ヨットマスター II」は文字盤レイアウトや機構を大きく変えたものの、そのほかのモデルは文字盤カラーや素材の変更がおもな新しさだった。
デイトナもまた、そんな傾向の強い新作時計であった。しかし一方で、明らかな新しさを、これまでのデイトナにはなかったデザインを感じさせた。いったい、この“新しさ”の正体は何なのか? ディテールとともにひもといていく。

自動巻き(Cal.4131)。47石。28800振動/時。パワーリザーブ約72時間。SS×Ptケース(直径40mm)。100m防水。要価格問い合わせ。
3つの“新しさ”
新しいデイトナの大きな特徴は3つある。ひとつは、グラン フー エナメル文字盤が与えられたことだ。

これまでホワイト文字盤には、マザー・オブ・パール等といった天然素材を除いて、ラッカー仕上げが与えられてきたデイトナ。今回初となるグラン フー エナメルの採用によって、既存のどのデイトナとも違った顔立ちを備えていると言える。インダイアルのスケール部分がホワイトになっていたり、陶器のようなツヤ感を持っていたりすることから、過去のデイトナには“アルビノ”“ポーセリン”と呼ばれたモデルも存在するが、本作は実際のエナメルであるため、この加工ならではのふっくらとした、そして磨かれることで光沢を出した質感の文字盤となっており、過去のどの意匠とも異なるテイストだ。

また、フラットであった従来文字盤と比べて、奥行きが出ていることにも気付かされる。文字盤と各インダイアルが別体パーツであるためだ。しかも一般に多い、メタル製文字盤に直接釉薬を塗布する手法ではなく、セラミックプレートに塗布され、焼成されたものを真鍮ベースに取り付けている。インダイアルを縁取るメタルはしっかりとポリッシュされており、エナメルの光沢と相まって、本作の高級感を強調する。
ふたつ目の特徴は、新しいセラクロムベゼルだ。現行デイトナはプラチナ製モデルを除き、セラクロムベゼルにはブラックカラーが用いられてきた。「オイスター パーペチュアル GMTマスター II」に代表されるように、ロレックスは高度なハイテクセラミックスのカラーリング技術を誇るが、デイトナではブラックが基本。本作も一見するとブラックかと思いきや、アンスラサイトグレーとなっている。また、使われる素材が新しくなっており、タングステンカーバイドを添加したジルコニアによって製造されたものだという。この新しいセラクロムベゼルについて、特許出願中とのこと。素材を変えた理由は、耐久性のためと考えられる。

3つ目の新しさは、ロレジウムであるということだ。ロレジウムはロレックスの独自用語で、ステンレススティールとプラチナをコンビネーションして使用した外装を指す。これまで「オイスター パーペチュアル ヨットマスター」のみに採用されてきたが、今回デイトナでもバリエーションのひとつとして盛り込まれた。なお、ヨットマスターはベゼルがプラチナであることに対して、本作はベゼルリング、そしてケースバックがプラチナとなっている。ほかのメタル部分は、高性能ステンレススティールである「オイスタースチール」製だ。

ひとつひとつの“新しさ”に宿る、ロレックスの最先端
2026年にロレックスからリリースされた「オイスター パーペチュアル コスモグラフ デイトナ」Ref.126502の、3つの“新しさ”にフォーカスした。
これら3つの変更点は、これまでの同コレクションにはなかった新しさであると同時に、ロレックスの時計製造の実力に改めて感嘆させられるものである。とりわけグラン フー エナメル、そして新開発素材の使用は、どのブランドでも実現できるものではない。デザインを派手に変えたわけでもなく、しかし“初”そして“高度な技術力を示す仕様”を盛り込むことで、明確な“新しさ”を打ち出す手腕は、巧みと言わざるを得ない。実際これまでの新作時計も、そういった傾向であったことを思えば、本作もまたロレックスのそんな強みが生かされた、明らかに“新しい”デイトナなのである。




