【インタビュー】ブルガリ グループCEO「ジャン-クリストフ・ババン」

FEATURE本誌記事
2020.07.20
広田雅将(本誌):取材・文 Text by Masayuki Hirota (Chronos-Japan)

辣腕経営者の語るバーゼルワールド離脱の深意とコロナ後の展望

 薄型時計で気を吐くのみならず、今や時計見本市の行方をも左右するに至ったブルガリ。同グループを率いるのはジャン-クリストフ・ババン。コロナ禍でも比較的堅調な同社は今後、どうビジネスを展開していくのだろうか?彼がビジネスの前に語ったのは、ブルガリが注力する医療関係者へのサポートだ。

ジャン-クリストフ・ババン

ジャン-クリストフ・ババン
ブルガリ グループCEO。1959年、フランス生まれ。ビジネススクールでMBAを取得後、コンサルティング会社などを経て、タグ・ホイヤーCEOに抜擢。卓越した手腕で同社を成長させる。2013年、現職に就任。内外装の質感向上と明確なメッセージの打ち出しにより、ブルガリを再び成長軌道に乗せた立役者。現在は社会貢献にも注力する。

「現在ブルガリは、イタリアの病院に3D顕微鏡の提供を行っている。また北イタリアにある香水の工場を使ってハンドクレンジングジェルを製造し、新型コロナウイルスの被害が大きな母国イタリアに続き、スイス、英国にもジェルを出荷する。これらはビジネスではなく、ドネーションだよ。大変な時代だが、これは会社としての責任である。まずは人々を守ることだね」

〝ノブレス・オブリージュ〞 を行う一方で、ブルガリは 〝コロナ後〞 に向けても手を打っている。そのひとつがバーゼルワールドからの離脱だ。

「バーゼルワールド離脱はコストの問題だった。対して私たちは、8月下旬にジュネーブ ウォッチ デイズを開催するつもりだ。最終的に離脱を決めたのは、5つのメジャーブランドがバーゼルを去ったためだ。ロレックスとパテックフィリップが去ってしまうので、結果として時計見本市から観客は大きく減るだろう。ブルガリのイメージにも影響が出る。 こういった要素を踏まえ、LVMHウォッチメイキングディヴィジョンCEO兼タグ・ホイヤーCEOであるステファン・ビアンキとも話した結果、バーゼルから出ることを決めた」

 では2021年はどうするのか。

「4月上旬にジュネーブのパレクスポでFHH(高級時計財団)と提携して開催される見本市に、ブルガリは参加したいと考えている。バーゼルワールドはスイスの時計業界の象徴で、ひとつ屋根の下でいろいろやってきた。私たちの拠点はヌーシャテルにあり、そこを本拠地にしたいが、ジュネーブでの見本市は良い選択になるだろう」

 なんと、 ブルガリは来年4月のジュネーブに参加を希望しているらしい。では、コロナ禍の下、各社が注目するEコマースへの取り組みはどうなのか?

「こういう状況下だからEコマースは大きく伸びている。1日24時間、1週間で7日間、オンラインなら思い立ったらすぐ買える。ただブティックとEコマースは補完的な関係になるだろう。日本だと70%はブルガリのウェブサイトで製品情報を見る。次に店で時計を試して、 家に戻ってまた見る。それで欲しくなって買う。時計はブレスレットの調整がいるだろう?それで店に戻って、お茶を飲みながらブレスレットを調整してもらえたりできる、例えばね」

ブルガリ・ブルガリ シティーズ限定モデル TOKYO

ブルガリ ブルガリ・ブルガリ シティーズ限定モデル TOKYO
ベゼルに世界9都市の名を刻んだブルガリ・ブルガリの最新作。日本で販売されるのはローマと東京モデル。戦略的な価格だが、自社製ムーブメントを搭載し、ケースもDLCコーティング。ストラップは容易に交換可能で、写真のブラウンカーフレザーストラップに加え、編み込み風のブラックラバーストラップも付属する。非常に魅力的なモデル。自動巻き(Cal.BVL 191)。26石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約42時間。DLCコーティングを施したSS(直径41mm)。5気圧防水。45万円。7月発売予定。


Contact info: ブルガリ ジャパン Tel.03-6362-0100


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