いくつもの複雑機構を備えた時計でさえ、そのほとんどが基本的な時間表示である、時・分・秒針を文字盤の中心に備え、全体のデザインを左右対称のものとしようとしている。ここでは、それとは異なる配置で個性を備えた、オフセンターダイアルモデルの中から名品を5本ピックアップして紹介する。

Originally published on watchtime.com
Text by Mark Bernardo
2021年8月4日掲載記事

A.ランゲ&ゾーネ「ランゲ1」

ランゲ1

「ランゲ1」。手巻き(Cal.L121.1)。43石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約72時間。18Kホワイトゴールドケース(直径38.5mm、厚さ9.8mm)。3気圧防水。447万7000円(税込み)。(問)A.ランゲ&ゾーネ Tel. 0120-23-1845

 A.ランゲ&ゾーネが1994年に現代のフラッグシップモデルとして発表した「ランゲ1」は、オフセンターダイアルの時計を語る上で欠かせないモデルだ。オリジナルのランゲ1は、ムーンフェイズ、トゥールビヨン、永久カレンダーなど、さまざまな複雑機構を搭載した時計シリーズの原型となったが、その中核となるモデルは4半世紀以上経った今でもほとんど変わっていない。9時位置のオフセンターダイアルで時・分を表示し、4時半位置にはより小さなサブダイアルで秒を表示、2時位置にはふたつの窓からなる大胆なアウトサイズデイト表示、3時位置にはアナログのパワーリザーブ表示("auf"(フル)から"ab"(ゼロ)まで)を備えている。控えめな直径38.5mmのホワイトゴールドケースに、純銀製文字盤を備え、約72時間駆動の自社製キャリバーL121.1が搭載されている。


アーミン・シュトローム「ピュア・レゾナンス・スペシャル・エディション・スカイ・ブルー」

ピュア・レゾナンス・スペシャル・エディション・スカイ・ブルー

「ピュア・レゾナンス・スペシャル・エディション・スカイ・ブルー」。手巻き(Cal.ARF16)。36石。2万5200振動/時。パワーリザーブ約48時間。18Kホワイトゴールドケース(直径42mm、厚さ13mm)。50m防水。世界限定3本。予価1155万円(税込み)。(問)ノーブル スタイリング Tel.03-6277-1604

 腕時計が備える機能が少なければ少ないほど、精度が上がるというのがアーミン・シュトロームの考えだ。2018年に発表され、2021年に特別な「スカイ・ブルー」エディションが発売された「ピュア・レゾナンス」は、この考えに基づいて具現化されたモデルである。ムーブメントはふたつのテンプを備え、それが共鳴振動することによりエネルギーを供給し、それと同時にクロノメーターレベルの精度を実現している。この時分の時間表示は、ローマンインデックスを備えたオフセンターにある文字盤で行われる。このギヨシェ装飾は独立時計師として尊敬を集めるカリ・ヴティライネンが手作業で製作したものである。また、7時位置のサブダイアルはスモールセコンドで、自社製キャリバーARF16の珍しい直線で表現されたコート・ド・ジュネーブ仕上げのブリッジが鑑賞できるようになっている。搭載されるムーブメントはふたつの香箱により、約2日間のパワーリザーブを保持している。


ブレゲ「トラディション レトログラード デイト 7597」

トラディション レトログラード デイト 7597

「トラディション レトログラード デイト 7597」。自動巻き(Cal.505Q, 14 ½''')。45石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約50時間。プラチナケース(直径40mm、厚さ12.10mm)。3気圧防水。451万円(税込み)。(問)ブレゲ ブティック銀座 Tel.03-6254-7211

 2005年に誕生したブレゲの「トラディション」コレクションは、創業者アブラアン-ルイ・ブレゲが1796年に発明した懐中時計「スースクリプション」と、その後継機である「タクト・ウォッチ」に敬意を表し、主要なムーブメント部品を地板の上に置き、中心から外れた位置にインダイアルを配している。トラディション レトログラード デイト 7597は、ブレゲの名を冠した創業者が開発した複雑機構のひとつであるレトログラード式の日付表示を追加している。直径40mmのゴールドケースには、シリコン製ヒゲゼンマイを備えた自動巻きキャリバー505Qが搭載されている。ゴールド製ローターは、自動巻き時計が「ペルペチュアル」として世に出た頃を想起させる。オフセンターのダイアルはクル・ド・パリ模様が施され、3時から9時にかけた外周にはレトログラード方式の日付表示が配されている。


F.P.ジュルヌ「オートマチック・リュヌ」

オートマチック・リュヌ

「オートマチック・リュヌ」。自動巻き(Cal.1300.3)。36石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約120時間。18Kローズゴールドケース(直径40.00mm、厚さ10.60mm)。3気圧防水。613万2500円(税込み)。(問)F.P.ジュルヌ東京ブティック Tel.03-5468-0931

 F.P.ジュルヌは、2007年にオリジナルの「オクタ・オートマチック・リュヌ」を発表し、2019年には文字盤とリュウズを刷新、さらに新しいケースサイズを追加して、この象徴的なムーンフェイズウォッチをリニューアルした。ケースは40mmと42mmのサイズで、プラチナまたは18Kローズゴールド製である。この時計は、フラットなリュウズに特徴的なシルクロープのモチーフが施され、シルバーまたはハバナブラウン(写真)の文字盤が用意されている。文字盤には、外周にレイルウェイ・ミニッツトラックと、ブルーまたはゴールドでプリントされたアラビア数字、そして中央にはクル・ド・パリ模様のギヨシェが施されている。9時位置には約120時間のパワーリザーブ表示、4時位置にはスモールセコンド、7時位置には特徴的な機能である、サファイアディスクを用いたムーンフェイズ表示が配されている。ムーブメントには自社製キャリバー1300.3が搭載されており、主要部品には18Kゴールドが採用されている。


ジャケ・ドロー「グラン・セコンド スケルトン プラズマセラミック」

グラン・セコンド スケルトン プラズマセラミック

「グラン・セコンド スケルトン プラズマセラミック」。自動巻き(Cal.Jaquet Droz 2663 SQ)。30石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約68時間。プラズマセラミックスケース(直径41.50mm、厚さ12.48mm)。3気圧防水。282万7000円(税込み)。(問)ジャケ・ドロー ブティック銀座 Tel.03-6254-7288

 ジャケ・ドローは、2018年にブランド初のスケルトンウォッチを発表し、その2年後にはプラズマセラミックス製の新モデルを追加した。ホワイトセラミックスを超高温ガスでプラズマ処理して、アントラサイトグレーのなめらかな光沢を実現したこの素材は、卓越した硬度と耐傷性も誇る。またグレーのファブリックストラップは、ケースと同じプラズマセラミックスとステンレススティールを使用したフォールディングクラスプで固定されている。文字盤はジャケ・ドローのアイコニックな8の字型で、12時位置のダイアルに時分が表示される。このダイアルにはグレーの処理を施したホワイトゴールドの針とインデックスが使用され、6時位置のサブダイアルにはラージセコンドが表示される。


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