世界のセレブたちがどんな時計を着けているのか、ワンシーンを切り取り紹介する連載コラム「セレブウォッチ・ハンティング」。今回は2023年にデビュー60周年を迎え、4月に通算23回目の来日公演を行う歌手エリック・クラプトンが、2013年にニューヨークで開催されたギターフェスティバルで着用していたロレックスを紹介しよう。
Text by Yukaco Numamoto
2023年2月5日掲載記事
誰もが知るギタリスト、エリック・クラプトン
イギリスのミュージシャンであり、シンガーソングライターであるエリック・クラプトン。これまでにグラミー賞を18回受賞し、ブリット・アワード功労賞も受章し、バッキンガム宮殿で大英帝国勲章を授与され、最も影響力のあるギタリストのひとりとして評価されている。ソロアーティストとして、またロックバンドのヤードバーズやクリームと合わせて3度ロックの殿堂入りをした唯一の存在でもある。
今回紹介する写真は2013年4月12日、ニューヨークのマディソン・スクエア・ガーデンで開催されたクロスロード・ギター・フェスティバルのDay1に登場したエリック・クラプトンを撮影したものである。クロスロード・ギター・フェスティバルとは、カリブ海のアンティグア島に設立したクロスロードセンター (麻薬中毒患者の救済施設)を支援するためのチャリティーコンサートだ。世界の名だたるギタリストが集結し、夢の祭典とまで言われているイベントである。2004年からこの名称でスタートし、2013年までは3年に一度のペースで開催され、直近では2019年に開催された。
参加アーティストは主宰でもあるエリック・クラプトンが個人的に声を掛けたギタリストたちである。ブリティッシュロック3大ギタリストと称される3人(つまりエリック・クラプトンとジミー・ぺイジ、先日急逝したジェフ・ベック)の中から、クラプトンとベックが揃ってステージに立つことでも有名だ。主宰のクラプトンはもちろん毎回参加しているが、ジェフ・ベックも2010年、2013年、2019年の3回参加しているのである。
ロレックス「オイスター パーペチュアル デイトジャスト」
車と時計が好きなエリック・クラプトンは壮大なウォッチコレクションを持っている。その中でも最近話題となったのは、彼がオークションに出品した、世界に2本しかない1987年製のパテック フィリップのプラチナ製のパーペチュアルカレンダーウォッチだ。エリック クラプトンはこの時計を2002年に入手したとされているが、いくらで購入したのかは不明だ。このモデルが最初にオークションに出されたのは1989年で、その時は約2000万円で落札されたが、その後の時計市場の高騰を差し引いても一度エリック・クラプトンの手に渡ったことによりさらに価値が上がったと言えるだろう。約2億8500万円で落札したのはアジアのプライベートコレクターとのことなので、私たちが目にする機会はおそらくほぼないと思われる。
超絶コレクションを所有している彼が日常的に使用していることが多く確認されるのはロレックスの腕時計だ。オイスター パーペチュアル ミルガウスやオイスター パーペチュアル GMTマスターⅡなども所有していると言われている。2013年のクロスロード・ギター・フェスティバルで着用していたのは、「オイスター パーペチュアル デイトジャスト」だと思われる。シンプルな白文字盤と3連のオイスター ブレスレットが、フェンダー社のギター“Eric Clapton Stratocaster”とリンクする。フェンダーの企業理念は、「音楽」を表現手段とし、「音楽」で生活に悦びをもたらす人々に対して価値のある伝説的な製品を提供し、世界をより豊かにすることだと掲げられている。エリック・クラプトンにとって、ギターと日々着用する腕時計は別の存在だが、"モノ選び"の姿勢には共通するものが感じられる。多くの伝説を生み出してきたロレックスの腕時計は彼を取り巻く日常のアイテムとして信頼され、選ばれているのだろう。
ロレックスクラシックウォッチの中で放つ存在感
ロレックス「オイスター パーペチュアル デイトジャスト」は初期モデルから大きなデザイン変更がされず、誰が見てもひと目で分かる時計として広く知られている存在である。エリック・クラプトンの着用モデルはスムースベゼルを搭載し、光が反射する様子も楽しむことができる。シンプルなアワーマーカーはゴールド製で高い視認性を誇る。
オイスター パーペチュアル デイトジャストのデザインの中で特徴的なもののひとつに日付表示を2.5倍に拡大するサイクロップレンズが挙げられるだろう。サイクロップというのはギリシャ神話に登場するひとつ目の巨人の名(サイクロプス)である。
現行モデルに搭載されるムーブメントはCal.3235であるが、こちらのムーブメントが搭載されたのは2016年製造モデル以降なので、エリック・クラプトンが着用している個体はCal.3135を搭載すると考えられる。C.O.S.C.クロノメーター以上のロレックスクロノメーター準拠の高精度と、どの時間帯でも操作可能なカレンダー早送り機構を搭載するなど、高い実用性は31系でも変わらない。スポーツモデルが注目されがちなここ数年ではあるが、ロレックス3大発明(オイスターケース、パーペチュアル自動巻き、デイトジャスト)をすべて備え、存在感を放ち続けるモデルのひとつである。
いつの時代にも色褪せない時計と音楽の魅力
今回取り上げた写真が撮影された2013年にエリック・クラプトンが発表したアルバム「オールド・ソック」は当時新曲を2曲含むカバー・アルバムである。収録曲はエリック・クラプトンのたどってきた歴史が感じられるフォーク、ブルース、カントリーがベースになっている。原点回帰という気分の時期にウォッチコレクションの中から手にした腕時計は、どの時代にも色褪せることがない1本だったのだと思う。2023年4月の来日時にはどんな腕時計を着用しているのかも楽しみに待ちたい。
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