ダイバーズウォッチ第3回「 ダイバーズウォッチの定義」

FEATURE時計機構論
2017.08.22
菅原 茂:文
Text by Shigeru Sugawara

 防水機能が備わる時計には「防水時計」と「ダーバーズウォッチ」の二つがあることは第1回で述べた通り。前者はあくまでも日常生活防水で、潜水に適した時計ではない。一般的によく見かける「3気圧防水」は、時計に3気圧相当の水圧が加わっても、内部への水の浸入が防げるという耐圧力値を示している。ただし、水中での静止状態という条件つきなので、この時計を着けて3気圧相当の水深30mまで潜れると保証しているわけではけっしてない。水中での使用に適さないどころか、現実的には汗や洗顔の際の水滴、軽い雨の濡れ程度なら大丈夫といったレベルの防水だ。

 JIS(ISOもほぼ同じ)では、3気圧までは1種「日常生活防水」に属し、4気圧以上10気圧までは2種「日常生活強化防水」と区分されている。2種になると軽度のマリンスポーツに使えると考えられている。ところが、その10気圧防水、すなわち100m防水が実はユーザーにとってわかりにくいボーダーラインである。

 なぜなら、2種「日常生活強化防水」のカテゴリーでの10気圧防水(水深100m相当)は、やはり水中での静止状態という条件付きでの耐圧を指しているだけで、もとより潜水を想定していない。10気圧に相当する水深100m防水でも、潜水用時計としての条件をクリアするものがダイバーズウォッチとされ、実際ダイバーズウォッチの防水性の最低ラインがこの100mに定められている。同じ数値でも、方や潜水不可、方や潜水可なのだ。

 デザインがダイバーズウォッチのように仕立てられ、防水性も高いスポーツウォッチは世界中に大量に存在している。しかし、日常強化防水時計に属し、ダイバーズウォッチ規格に準拠していない時計は、あくまでも雰囲気を楽しむためのファッション的な“陸(おか)”ダイバーズと考えるのが正解だろう。この種の時計の名称にたとえ「ダイバー」の言葉が使われていたとしても、潜水用防水時計ではないのだ。