ムーブメント、選ぶべきは薄型か、厚型か? メリット、デメリットで考える

FEATURE良質な時計の選び方
2020.06.13

ムーブメントは薄いほうがいいのか、厚いほうのがいいのか? それぞれのメリット、デメリットを比較しながら「自分にとっては、どちらを選べば良いのか?」という悩みへの手助けをしたい。

広田雅将(クロノス日本版):文
Text by Masayuki Hirota (Chronos-Japan)

薄い時計(ムーブメント)のメリットとデメリット

2010年代以降、時計メーカーは機能だけでなく、薄さを競うようになった。2014年、ピアジェは極薄の900Pをリリースし、ブルガリも薄い「オクト フィニッシモ」を発表した。加えてシチズンも、2016年にムーブメント厚わずか1mmの「エコ・ドライブ ワン」を加えた。20年前に「デカ厚時計」が流行ったのとは真逆で、今や機械式、クォーツ式を問わず、薄さは各社が目指す目標のひとつになった。

calibre2120
オーデマ ピゲ Cal.2120
22Kゴールド製のローターが美しいCal.2120。搭載している現行機には「ジュール オーデマ エクストラ シン」がある。2120系ではほかに、カレンダー機能を追加したCal.2121が「ロイヤル オーク エクストラ シン」に採用されている。

薄型時計の基準

 何をもって薄型時計とするか、明確な基準はない。しかし一般的な時計の場合、ケース厚が10mmを切れば薄型、6mmを切れば極薄と言える。またムーブメントの場合、自動巻きなら厚さが3mm以下なら薄型、2.5mm以下なら極薄と見なせるだろう。

メリットとデメリットを考える

メリット : 装着感に優れる
デメリット : 磁気帯びしやすい、ショックに弱い

 薄い時計(ムーブメント)は、装着感に優れるが、磁気帯びしやすく、ショックに弱いという弱点がある。もし極薄時計に頑強さを求めるならば、設計が新しいものを選ぶこと。一般的に、設計が古いものに比べて、耐久性などが改善されている。ただし、耐久性を高めた新しい薄型ムーブメントは、受け(ブリッジ)の面積が大きく、見栄えはしない。設計年を問わず、薄い時計には強いショックを与えないこと、また磁気からは遠ざけること。薄い時計は大変魅力的だが、今なお気遣いが必要である。


薄型ムーブメントの設計年とスペック

薄型手巻きムーブメント

手巻きムーブメントには古典的な設計を持つものが少なくない。とりわけ、ヴァシュロン・コンスタンタンのCal.1003と、オーデマ ピゲのCal.2003系は、古典の設計をそのまま踏襲する点で、希有なムーブメントである。

・フレデリック・ピゲ Cal.21
基本設計は1925年。たびたびの改良を受け、2000年代まで用いられた。厚さ1.75mm(途中から1.73mm)。現在は生産終了。

・ヴァシュロン・コンスタンタン Cal.1003系
初出は1955年。古典的な設計を残す数少ない極薄ムーブメント。薄さ1.64mm。2針。

・オーデマ ピゲ Cal.2003系
初出は1953年。ベースはヴァシュロン・コンスタンタンのCal.1003に同じく、ジャガー・ルクルトのCal.803。薄さ1.64mm。2針。

・ジャガー・ルクルト Cal.848
Cal.803の改良版。実用性を高めるため、厚さは1.85mmに増やされた。2針。

・セイコー Cal.68系
基本設計1969年。スイス以外では唯一の極薄ムーブメント。厚さは1.98mm。耐久性を高めるため、大ぶりな地板が与えられている。2針。

・ピアジェ Cal.430P
初出1998年。大ぶりな受けを持つ、近代的な極薄ムーブメント。以降のピアジェは、薄型ムーブメントに耐久性を持たせようと試みている。厚さは2.1mm。2針。現在はカルティエなども採用する。

・ブルガリ Cal.BVL 128
初出2015年。地板を拡大することで、薄型化とロングパワーリザーブの両立に成功したムーブメント。厚さ2.23mm、パワーリザーブ約65時間。3針。

Cal68
セイコー Cal.6870
68系は1969年、「セイコー極薄型高級ドレスウオッチ<SEIKO U.T.D.>」に搭載されたCal.6800が初出。写真は1993年にクレドール専用モデルとして製造が開始されたCal.6870で、「クレドール シグノ」シリーズなどが搭載している。

薄型自動巻きムーブメント

・パテック フィリップ Cal.240
初出1977年。ゼンマイを巻き上げるローターをムーブメントに組み込んだマイクロローター式自動巻きムーブメントである。厚さ2.53mm。2針。

・オーデマ ピゲ Cal.2120系
時分針を駆動する2番車をセンターに持ちながらも薄型化に成功した自動巻きムーブメント。初出は1967年。ベースはジャガー・ルクルトのCal.920系。このベースはパテック フィリップやヴァシュロン・コンスタンタンにも提供された。厚さは2.45mm(カレンダー付きのCal.2121は3.05mm)。2針。

・ブルガリ Cal.BVL 138
初出2017年。オクト フィニッシモの手巻きムーブメントCal.BVL 128からパワーリザーブを省き、そのスペースにローターを載せたムーブメント。厚さは2.23mm。3針。

薄型クォーツムーブメント

・シチズン Cal.8826
文字盤側にソーラーセルを持つエコ・ドライブ。ムーブメントの厚みを極限まで減らしたのがCal.8826である。初出2016年。厚さ1mm。2針。

ピアジェ「アルティプラノ アルティメートコンセプト」厚さ2ミリへの挑戦

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