2026年新作のうち、クラシカルな魅力を持つドレスウォッチの傑作腕時計5本を紹介しよう。現在のドレスウォッチは、往年の名作を基にしたクラシカルなモデルが多く、普遍的な魅力が表現されていると言える。また、技術の向上によって、薄くコンパクトな仕立てであっても、実用精度、ロングパワーリザーブ、防水性を備えている。本記事では、そんな現代基準のドレスウォッチの新作について、ベースとなった名作にも触れつつ紹介する。

Text by Shin-ichi Sato
[2026年4月27日公開記事]
スーツスタイルに合せたくなるエレガントなドレスウォッチに注目
今回は、4月までに発表された2026年新作のうち、エレガンスにあふれるドレスウォッチの傑作5モデルを紹介する。昨今のドレスウォッチは、往年の名作を引用した“クラシカルさ”を基軸として、普遍的な魅力が表現されたモデルが多い。また、技術の向上によって薄型でエレガントであっても防水性が確保され、ロングパワーリザーブで、実用性も高い仕上がりだ。そこで今回は、ベースとなった名作があればそちらにも触れつつ、現代基準のドレスウォッチの魅力を紹介してゆこう。
オメガ「コンステレーション オブザーバトリー」
最初に取り上げるのは、オメガのドレスウォッチコレクションとして長い歴史を持つ「コンステレーション」の新作として発表された「コンステレーション オブザーバトリー」である。本作は、時分のみの2針ウォッチとして初めて、METAS(スイス連邦計量・認定局)によるマスター クロノメーター認定を受けたモデルとなる。全体のデザインは、ラウンドケースにエッジの効いたラグ、十二角の文字盤、くさび型インデックス、6時位置の象徴的な“スター”といった、1960年代のコンステレーションからの影響が強く感じられるものだ。そして本作は、立体感のある造形の時分針を持つ2針デザインとなる。

新作のラインナップの中で唯一、ブラックセラミックス製のダイアルを備える1本。自動巻き(Cal.8914)。38石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約60時間。O-MEGAスティールケース(直径39.4mm、厚さ12.23mm)。30m防水。172万7000円(税込み)。(問)オメガ Tel.0570-000087
さて、マスター クロノメーター認定についておさらいすると、強い磁場環境に曝露しても停止せず、その後も精度範囲に収まること、パワーリザーブの残量にかかわらず精度が安定することなどの極めて厳しい規定について、ケーシング状態でも検査を行うものだ。オメガは、これをクリアするための極めて高い技術を有しているが、本作に関しての問題は“秒針のない本作で、どうやって秒単位の精度を計測するのか?”ということである。
ここで活躍したのが、独立認定機関のラボラトワール・ドゥ・プレシジョンが開発した音響検査法「デュアル メトリック テクノロジー」である。これは、ムーブメントが発する音で精度検査を行う新技術であり、従来では実現できなかった秒針を持たない時計であっても、マスター クロノメーターの認定が可能となったのだ。
コンステレーション オブザーバトリーの発表に際して、オメガらしく豊富なカラーバリエーションが用意された。強度や硬度が高く、耐食性を備えるほか、明るく白い輝きを持つO-MEGAスティールをケースに用いたモデルでは、シルバー、ネイビー、グリーン、ブラック等の文字盤が用意され、さらに18Kセドナ™ゴールドモデル、18Kムーンシャイン™ゴールドモデルなどが並ぶ。今回注目するのはO-MEGAスティールケースとブラック文字盤の組み合わせだ。
本作は、発表されたバリエーションの中で唯一、ブラックセラミックス製の文字盤を採用したモデルだ。セラミックス製モデルを多数ラインナップするオメガの技術がここにも発揮されており、文字盤のフラットな面の光沢感や、特徴的な十二角のチャンファーのエッジが鋭く、完成度が高い。
ショパール「L.U.C 1860」
1860年に創業という長い歴史を持つショパールであるが、自社製ムーブメントまで手掛けるマニュファクチュールとしての名声は1996年からとなる。本年は同ブランドのマニュファクチュール設立30周年となり、これを記念するモデルが発表された。

自動巻き(Cal.L.U.C 96.40-L)。29石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約65時間。ルーセントスティール™製ケース(直径36.5mm、厚さ 8.20mm)。30m防水。421万3000円(税込み)。(問)ショパール ジャパン プレス Tel.03-5524-8922
その中で注目の「L.U.C 1860」は、マニュファクチュール初の自社製ムーブメントを搭載した初代「L.U.C」をインスピレーション源としたドレスウォッチである。L.U.C 1860は2023年にデビューしており、本作はケースがルーセントスティール™製となる。文字盤には、スイスのヴァル・ド・トラヴェール地方のマニュファクチュール近くを流れる、アリューズ川から着想を得たブルーが組み合わされる。また、ブランドロゴから放射状に広がるギヨシェ彫りのサンバースト模様は、初代L.U.Cを彷彿とさせる仕上がりだ。
搭載される薄型のCal.L.U.C 96.40-Lは、極めて高いレベルの仕上げが施されるとして、好事家から高く評価されるムーブメントだ。マイクロローターの採用により、ムーブメント厚さは3.30mmに抑えられており、時計仕上がり厚さは8.20mmとなっている。また、薄型でありながら、スイス公式クロノメーター検定協会認定のCOSCクロノメーターかつ、ツインバレルの採用による約65時間のパワーリザーブを確保しており、現代的な性能を有している。
A.ランゲ&ゾーネ「サクソニア・アニュアルカレンダー」
数々のドレスウォッチを手掛けるA.ランゲ&ゾーネからも注目のモデルが発表された。「サクソニア・アニュアルカレンダー」だ。本作は、直径36mm、厚さ9.8mmという、コンパクトな3針モデルのようなスタイリングに、年次カレンダーを詰め込んだモデルとなっている。

自動巻き(Cal.L207.1)。56石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約60時間。18KPGケース(直径36mm、厚さ9.8mm)。要価格問い合わせ。(問)A.ランゲ&ゾーネ Tel.0120-23-1845
本作の年次カレンダーは、12時位置にふたつのディスクによるアウトサイズデイト、3時位置に月表示、6時位置にスモールセコンドとムーンフェイズ表示、9時位置に曜日表示を備えており、1年に2月末の一度だけカレンダーを修正すれば、正しい日付を表示する仕組みだ。なお、ムーンフェイズ表示は約122.6年に1日の誤差しか生じない高い精度を備え、18Kゴールド製のムーンディスクにはディープブルーのコーティングが施されており、428個の星と、天の川が描き出されている。
このような多機能かつコンパクトな仕立てを実現するのが、新開発のCal.L207.1である。すべてのカレンダー表示とムーンフェイズ表示は、それぞれのプッシュボタンで個別に調整できるだけでなく、10時位置のプッシュボタンによって一括で表示を進めることができ、実用性も高い。さらにケースバックからは、Cal.L207.1へ施された、極めて評価の高いA.ランゲ&ゾーネの仕上げを堪能することができる。
ヴァシュロン・コンスタンタン「ヒストリーク・アメリカン 1921」
1921年にアメリカ向けに製造されたモデルから着想を得たリバイバルウォッチ「ヒストリーク・アメリカン 1921」に、18Kピンクゴールド製ケースの新バリエーションが追加された。ヒストリーク・アメリカン 1921は、柔らかな曲線で構成されたクッションケースと、文字盤を時計回りに約45度回転させ、手を自然に前に出した際に12時位置が正面に来るように配置している点が特徴である。

手巻き(Cal.4400 AS)。21石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約65時間。18KPGケース(直径36.5mm、厚さ7.41mm)。3気圧防水。572万円(税込み)。(問)ヴァシュロン・コンスタンタン Tel.0120-63-1755
今般発表されたのはふたつのバリエーションで、基本デザインを共有しつつ、現代的な佇まいの40mm径モデルと、クラシカルなテイストのあるコンパクトな36.5mm径モデルで展開される。文字盤はグレイン仕上げとなっており、シルバートーンに細かな濃淡や輝きを加えたものとなっている。鮮やかなブルーで彩られたブレゲ数字とブレゲ針が組み合わされ、クラシカルかつエレガントさの際立つ仕上がりだ。文字盤3時位置には、均一なスネイル仕上げのスモールセコンドが配され、有機的な柔らかい印象のグレイン仕上げとのコントラストを生み出している。
搭載されるのは、厚さわずか2.8mmの手巻きムーブメントCal.4400 ASである。アシンメトリーな文字盤配置と、文字盤の12時位置にリュウズを配するレイアウトに合わせ、ムーブメントもケース内で回転させて収めている。また、この薄型ムーブメントによって、ケース厚は40mm径モデルで8.06mm、36.5mm径モデルで7.41mmという薄い仕立てとなっており、ここでもクラシカルさを生み出している。なお、パワーリザーブは約65時間と現代的な性能を備え、実用性も高い。
カルティエ「トーチュ」
最後に紹介するのは、カルティエの「トーチュ」である。発表された新作のうちで取り上げるのは、スモールモデルに分類されるコンパクトな仕立ての、18Kイエローゴールドモデルだ。

クォーツ。18KYGケース(縦33.4×横26.7mm、厚さ7.2mm)。日常生活防水。231万円(税込み)。(問)カルティエ カスタマー サービスセンター Tel.0120-1847-00
トーチュの歴史は古く、初出は1912年となる。名前はフランス語の“亀”を意味し、甲羅のような柔らかなカーブを持つケースシェイプが特徴だ。Ref.CRWGTO0015は、縦33.4mm、横26.7mmと、現代基準ではレディースモデルのサイズ感であるが、トーチュが登場した1912年頃や1920年代のカルティエを振り返ると、当時の男性向け「サントス・デュモン」や「トノー」で存在したサイズに近い。使用されているのが現代で人気のピンクゴールドではなくイエローゴールドである点も踏まえると、カルティエは、当時のモデルのテイストを現代のコーディネートに持ち込んでいると言えるだろう。
文字盤は柔らかな印象のシャンパンカラーで、ローマンインデックス部には浅い、放射状の凹凸を設けて、質感の違いを加えている。ケースはポリッシュ仕上げで、ステッチが表に出ない艶感のあるアリゲーターストラップを組み合わせており、ヴィンテージのドレスウォッチを彷彿とさせる仕上がりだ。




