【2026年新作時計】辛口ジャーナリストが評価した各ジャンルのベストモデルを解説付きで紹介

2026.05.09

日本、そして世界を代表する著名なジャーナリストたちに、2026年に発表された時計からベスト5を選んでもらう。今回は時計ジャーナリストであり、webChronosで「役に立つ!? 時計業界雑談通信」を連載中の渋谷ヤスヒト氏が選出。5つのジャンル・トピックスから、ベストな1本をそれぞれ選出した。


周年モデル部門:ロレックス「オイスター パーペチュアル 41」Ref.134303

ついに100周年を迎えた防水時計のパイオニアモデル。この周年を祝して18Kイエローゴールド製ドームベゼルとリュウズ、さらに文字盤に「100 years」の文字が入っている。またこれは他のモデルもそうだが、独自の品質基準「高精度クロノメーター(Superlative Chronometer)」認定が精度、防水性、自動巻き、パワーリザーブの4項目に加えて、新たに耐磁性能、信頼性、持続可能性、という3つの項目をプラスし、より厳格化されたことも見逃せない魅力。

オイスター パーペチュアル 41

ロレックス「オイスター パーペチュアル 41」Ref.134303
自動巻き(Cal.3230)。31石。28800振動/時。パワーリザーブ約70時間。SS×18KYGケース(直径41mm)。100m防水。142万8900円(税込み)。


スケルトンモデル部門:カルティエ「カルティエ プリヴェ クラッシュ スケルトン」Ref.CRWHCH0012

今年多数登場したスケルトンモデルの中でも、時計愛好家にとって見逃せないのが、歴史的なアイコンモチーフのケースに新開発の専用ムーブメントを搭載してスケルトン化した世界150本限定のこのモデル。まだ発売前だが、これは時計コレクター垂涎の1本だ。

カルティエ プリヴェ クラッシュ スケルトン

©Cartier ©Valentin Abad
カルティエ「カルティエ プリヴェ クラッシュ スケルトン」Ref.CRWHCH0012
手巻き(Cal.1967 MC)。Ptケース(縦45.35×横25.2mm、厚さ12.97mm)。非防水。世界限定150本。予価1953万6000円(税込み)。2026年9月発売予定。(問)カルティエ カスタマー サービスセンター Tel.0120-1847-00


アフォーダブルプライス部門:チューダー「ロイヤル」Ref.2840D1A0-0002

ひたすら高額化するスイス時計。そのトレンドの中でどこよりもコストパフォーマンス(正確にはプライスパフォーマンス)競争でトップを走る、つまり価格を超えた価値ある時計を提供してくれるのがチューダー。新作はすべてこの称賛に値するが、中でも圧巻がマニュファクチュールムーブメントを搭載してコレクションすべてが一新されたスポーツウォッチコレクション「ロイヤル」だ。ケース&ブレスレット一体型のデザインの完成度も素晴らしい。

チューダー ロイヤル

チューダー「ロイヤル」Ref.2840D1A0-0002
自動巻き(Cal.MT5633)。26石。パワーリザーブ約70時間。SSケース(直径40mm、厚さ11.4mm)。100m防水。50万9300円(税込み)。(問)日本ロレックス / チューダー Tel.0120-929-570


コンプリケーションモデル部門:ジャガー・ルクルト「マスター・ハイブリス・インベンティバ ジャイロトゥールビヨン・ストラトスフェア」Ref.Q5306480

今年も超絶モデルは数あれども、何よりも気合を感じたのがこのモデル。世界初の多軸トゥールビヨン「ジャイロ・トゥールビヨン」(2004年)の現地取材の経験もある筆者にとって、ついに登場したメゾン初の3軸トゥールビヨンとなるこの作品。WWG展示ブースの中央に展示されたその姿は、背景の氷のタワーの輝きも含めて神々しいばかり。

マスター・ハイブリス・インベンティバ ジャイロトゥールビヨン・ストラトスフェア

ジャガー・ルクルト「マスター・ハイブリス・インベンティバ ジャイロトゥールビヨン・ストラトスフェア」Ref.Q5306480
手巻き(Cal.178)。53石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約72時間。Ptケース(直径42mm、厚さ16.15mm)。50m防水。世界限定20本。要価格問い合わせ。(問)ジャガー・ルクルト Tel.0120-79-1833


アートウォッチ部門:ヴァン クリーフ&アーペル「ミッドナイト ジュール ニュイ ファーズ ドゥ リュンヌ ウォッチ」Ref.VCARPESA00

ジュビリーモチーフのマルチカラーダイアルのロレックスも含めてさまざまな“アートウォッチ”が登場した今年のWWG。その中でも、メゾン独自のアーティスティックでファンタジックなデイ&ナイト表示に加え、メカニズム的にも素晴らしかったのがこのモデル。24時間で1回転、つまり夜になると文字盤に登場する月の中にムーンフェイズ表示を組み込んであり、ケース8時位置のボタンを押せばアニメーション機能でいつでも楽しめる。時の経過をこれほど美しく楽しめる時計はほかにない。

ヴァン クリーフ&アーペル「ミッドナイト ジュール ニュイ ファーズ ドゥ リュンヌ ウォッチ」Ref.VCARPESA00
自動巻き。パワーリザーブ約36時間。18KWGケース(直径42mm)。予価2574万円(税込み)。2026年6月発売予定。(問)ヴァン クリーフ&アーペル ル デスク Tel.0120-10-1906


総評

 今年のウォッチズ&ワンダーズ ジュネーブ(以下W&WG)で発表された新作時計はどれも「なるほど、こう来たか!」と納得できるものばかり。「このブランドがなぜこんなおかしな時計を作ったの?」と嘆きたくなるような新作はひとつもなかった。これは高級時計の価値が、伝統的でクラシックな外見を守りながら、素材や縫製の工夫で着心地を追求している「トラッドスーツ」のようであるとうかがわせる。ヘリテージの継承、つまり「自分たちのアーカイブやスタイルから、後世が受け継ぐべき文化的価値を見極めて、それをしっかりと引き継ぐ」という真面目な考え方が、スイスを筆頭に時計業界に広まったからだ。ブレない真面目な時計作りが業界の主流になって、そんな新作時計が増えたのは、お世辞ではなく素晴らしいことだと思う。

 ただ、トラッドスーツに例えて言えば、「生地や職人技に凝るのは良いけれど、ごく一部の富裕層しか手が届かない超高級スーツばかりが目立つ=チューダーなど一部の時計ブランドを除けば、ほとんどの新作が一般消費者には購入不可能で、楽しみたくても楽しめないお値段だ」という問題は解決されていない。

 W&WGに出展していない時計ブランドも含めて、普通の人に「これなら、ちょっと無理しても買ってみよう」と思える時計と、そんな新作を誰もが知ることのできる機会がもっと増えないと、時計業界はこれから衰退してしまうのではないか。

 時計ブランドの数、その新作の数に比べてW&WGのステージは狭すぎる。今年の取材で、時計ブランドが世界に新作を発表する場がやはり足りないと感じたのは私だけだろうか。バーゼルワールドの復活はありえないし望まない。でも、そんな別のステージがあっても良いのでは? 例えば“カジュアル版W&WG”のようなバージョン、カテゴリーの新作展示会が。



選者のプロフィール

渋谷ヤスヒト

渋谷ヤスヒト

モノ情報誌の編集者として1995年からジュネーブ&バーゼル取材を開始。編集者兼ライターとして駆け回り、気が付くと2019年がまさかの25回目。スマートウォッチはもちろん、時計以外のあらゆるモノやコトも企画・取材・編集・執筆中。


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