日本、そして世界を代表する著名なジャーナリストたちに、ウォッチズ&ワンダーズ ジュネーブ 2026で発表された時計からベスト5を選んでもらう企画。今回は、「腕時計のある人生 Channel」をYouTubeで運営するRYの選出だ。ショパール「L.U.C 1860」から本見本市初登場となる中国ブランド・ベーレンスまで幅広い顔触れとなるものの、共通するのは「小さく・薄く・軽い」である。

1位:ショパール「L.U.C 1860」
ショパールのマニュファクチュール創設30周年を記念し、初代「L.U.C 1860」を継承した本作。
歴史に残る傑作と名高いCal.1.96の直系進化版である「L.U.C 96.40-L」を搭載。COSCクロノメーターとジュネーブ・シールをダブルで認定。正直“ジャケ買い”ならぬ、“ムーブメント買い”したいほど、性能も審美性も突出している。
ケースサイズ(直径36.5mm、厚さ8.20mm)、ルーセントスティール™製、ノンデイトという点も実用性が高い。
3年前に発表されたサーモンカラーダイアルのモデルは、当時のウォッチズ&ワンダーズ ジュネーブ(以下W&WG)後の同企画で2位に選出させていただいたが、本作はより万人が使いやすいブルー系ダイアルということで1位に。
文字盤のハンドギヨシェが、太陽から燦々と降り注ぐ日光のように見える点も個人的に好み。

自動巻き(Cal.L.U.C 96.40-L)。29石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約65時間。ルーセントスティール™製ケース(直径36.5mm、厚さ8.20mm)。30m防水。421万3000円(税込み)。(問)ショパール ジャパン プレス Tel.03-5524-8922
2位:オリス「オリス スターエディション」
「オリス スター」の誕生60周年を記念したモデル。
直径35.00mmのバレル型ケース、プレキシガラスの風防など、当時の雰囲気を残すレトロなディテールが素晴らしい。小さな時計が好きな方や、ヴィンテージ時計が好きな方にはかなり刺さるモデルのはず。
日本での販売価格は36万3000円(税込み)と、おそらく今年のW&WGで発表された全モデルの中でも“最安圏”のモデルであるが、W&WGを振り返った時に真っ先に思い出されるほど、個人的に最も心に残ったモデルとなった(やはり時計は価格の高い安いではない)。

自動巻き(Cal.Oris 733)。26石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約41時間。SSケース(直径35.0mm、厚さ11.1mm)。5気圧防水。36万3000円(税込み)。(問)オリスジャパン Tel.03-6260-6876
3位:ノモス「クラブ・スポーツ ネオマティック ワールドタイマー」
昨年の、年間を通して発表された腕時計ベスト5企画で第4位に選出させていただいたモデルの色違い(ホワイトシルバーメッキのダイアル)モデル。
今年もたくさんの魅力的なモデルが発表される中でもやはりベスト5に入れたいと思えるほどの時計。
価格・素材・サイズ・機能・スペック・操作感のバランスが素晴らしく、現行品のワールドタイマー時計として最も実用的で整ったパッケージングではないだろうか。
ホワイト系のダイアルになったことで、ポップな赤色と青色がちょうどいい差し色として機能し、日常を少し楽しい気分にしてくれると思う。

自動巻き(Cal.DUW 3202)。37石。パワーリザーブ約42時間。SSケース(直径40mm、厚さ9.9mm)。10気圧防水。77万2200円(税込み)。(問)大沢商会 Tel.03-3527-2682
4位:グランドセイコー「Evolution 9 Collection スプリングドライブ U.F.A. Ushio 300 Diver」Ref.SLGB025
昨年登場し世界中で話題をさらった、年差±20秒という驚異的な精度を誇るスプリングドライブ「U.F.A.」をまさかのダイバーズウォッチに搭載した本作。
さらにケースサイズは直径40.8mm、厚さ12.9mmと同ブランドの他のダイバーズウォッチから大きくサイズダウン。ボリュームがネックになっていた層にはうれしいサイズ感。
ノンデイトも良い。力強い海の潮流を文字盤に宿したUshioダイアルが素晴らしい。
ブルーとグリーンの2色で登場したが、ブラックやホワイトといったより使いやすいカラー展開にも期待したい。

自動巻きスプリングドライブ(Cal.9RB1)。33石。パワーリザーブ約72時間。ブライトチタンケース(直径40.8mm、厚さ12.9mm)。300m防水。165万円(税込み)。(問)セイコーウオッチ(株) お客様相談室(グランドセイコー) Tel.0120-302-617
5位:ベーレンス「Pupil Ultralight 14G」
2012年、中国の深圳で創業されたベーレンス(W&WGで初めて中国ブランドとして出展された点も、今年の本見本市の隠れたトピックのひとつかも)。
複雑かつ前衛的な機能やデザインをコンパクトにまとめるのがうまいという印象が個人的にはあるが、本作はパワーリザーブ表示、デイ&ナイト表示、ジャンピングアワーも付いて、ストラップを除く本体の重量がわずか14gという驚異的な軽さを実現。しかも手首に沿うようにわずかにケースを湾曲させ、それに合うように歯車を調整しているという。
カタログ値やイニシャル的な品質は価格に対してすごいと感じざるを得ない。
あとは継続的なサービス体制や日常使いの中での耐久性が認められれば、高級時計市場の第一線に躍り出てくるのはそう遠くないのかもしれない。

手巻き(Cal.BM09)。29石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約45時間。Tiケース(縦39.6×横34mm、厚さ5.15mm)。30m防水。9200米ドル(税込み)。(問)BEHRENS Tel.+086075528700381
総評
「細腕のための黄金期は近い」。
一言で表せばそう言えるほど、小径化・薄型化の流れが続いていると感じたウォッチズ&ワンダーズ ジュネーブ 2026であった。筆者をはじめとする細腕のための黄金期は近いのではないか。
よくファッションにはトレンドや揺り返しがあると言われているが、時計の世界にもそれは言えると考えている。
近年では、パネライの一般市場への登場をきっかけとする「時計の大型化」の流れが2000年前後から始まり、ロレックスの二次流通価格が高騰しはじめた2015年頃から「スポーツ時計」の流れが強まった。
その揺り戻しとしては、スイス時計ブランドの売り上げ価格においてカルティエがオメガを抜いて2位になった2021年から「クラシック回帰」の流れが始まり、ロレックスの二次流通価格がピークアウトした2022年から「ドレス時計」の流れが強まった。
……と筆者は考えている。
つまり、ざっくり2000年→2020年までの20年を大型化&スポーツ時計の時代と考えるならば、2020年→2040年までの20年は小型化&ドレス時計の時代になるのではないかと。
とはいえ、依然としてロレックスをはじめとするスポーツ時計やラグジュアリースポーツウォッチの人気は高い。
一方で、潮目の変わりを感じているメーカーは小径化・薄型化・ドレス化を早めに進めているのではないだろうか。
ここ数年ニュアンスカラーのような、淡いカラー展開が豊富であるが、今年、その傾向は弱まりつつも少し残っていたように感じる(モノトーン好きな筆者としては、シンプルにホワイト・シルバー・ブラック系で展開されるとさらにうれしい)。
今回も、例年と同様に「個人的に欲しい」とリアルに購入したいモデルを挙げさせていただいた。
時計識者(?)というよりも、ただの時計好きというイチ消費者目線で選んでいるので、購入が極めて難しい非現実的な価格や超複雑機構モデル、少量限定モデルが入っていない点はご了承いただきたい。
ベスト5には入れられなかったが、ジャガー・ルクルトの「マスター・コントロール」系やレイモンド ウェイルの「ミレジム ザ フィフティ」も素晴らしいと感じた。共通しているのはやはり「小さく・薄く・軽い」という点である。
最近ではW&WGだけではなく、1年を通して各社新作発表をする傾向があるので、引き続き、そんな新作モデルの登場を楽しみに待ちたい。
選者のプロフィール

腕時計のある人生 RY
1990年生まれ。本業は外国船の“船長”。初めて購入した機械式時計をきっかけに腕時計の魅力に取り憑かれる。腕時計好きの人口を増やすため、2019年にブログ「腕時計のある人生」を開設。20年にはYouTube「腕時計のある人生Channel」を開設した。webChronosへのインプレッション記事の寄稿やForza Stayleの人気動画シリーズ「ロック福田の腕時計魂」への出演なども行う。




