カレンダー機構 第2回「永久カレンダー」

FEATURE時計機構論
2019.05.23

菅原 茂:文
Text by Shigeru Sugawara

 時計にとっては、カレンダー表示は実は非常に厄介である。それは、カレンダーのシステムそのものが不規則であるからだ。1年を12か月とするのは、もともと月の満ち欠けの周期に由来するものだとしても、実際の月と符合するわけではなく、各月の日数にも統一感はない。それらの名称にしても恣意的だ。ローマ時代にカエサルとアウグストゥスが7月(ジュリアスのジュライ)と8月(アウグストゥスのオーガスト)を差し挟んだため、本来7番目を表すセプテンバーは9月に、8番目のオクトーバーが10月、9番目のノベンバーが11月、10番目のディセンバーが12月というように順に2つ後ろにずれたままである。また、グレゴリオ暦は、太陽暦としての精度をさらに向上させた功績は大きいが、カレンダーに内在する根本的な不規則性を解消したわけではないので、時計のカレンダーと実際のカレンダーを一致させるのは、難問だったわけである。

 7日を1周期として繰り返す曜日については扱いやすいが、日付は大いに問題だ。日数が異なる大小の月が不規則に並び、閏年さえもあるので、31日を1周期とする一般的な日付機構では対応できない場合があり、適宜人為的な修正をする必要がある。日付表示のみのモデルなら針を回すか早送り機能を使うなどして修正もさほど苦にならないが、日付・曜日・月を表示する「トリプル・カレンダー」となるとそうはいかない。年に何度もある31日に満たない月の翌日は、3つ揃えて正しい表示に調整するのに手間がかかる。調整しなければカレンダー機能がそもそも意味をなさないから困ったものだが、時計愛好家は、この調整もまた楽しみの一つだろう。