カレンダー機構 第2回「永久カレンダー」

FEATURE時計機構論
2019.05.23

ブレゲNo.1160

1783年に注文を受け1827年に完成に至った、「マリー・アントワネット」の名で知られる超複雑時計「ブレゲNo.160」を復刻した現代の「ブレゲNo.1160」。当時の永久カレンダー機構も忠実に再現され、2時位置に日付表示針、6時位置に曜日表示針、8時位置に12カ月表示ディスク(均時差カム付き)が置かれている。

 調整を不要とするカレンダー機構は作れないだろうか? おそらく多くの時計職人が知恵を絞ったことだろう。そこで考え出されたのが、一般に「永久カレンダー」(パーペチュアルカレンダー)と呼ばれる機構である。機械式時計の3大複雑機構に数えられる「永久カレンダー」は、各月の日数や閏年を判別して、時計が動き続ける限り、“永久に”実際のカレンダーを正しく表示するという便利な仕組みである。つまり、不規則なカレンダーを時計機構で規則化し、表示を自動化するという考え方だ。17世紀にはユリウス暦に基づく永久カレンダー機構を搭載したクロックが作られたと歴史書にあったと記憶するが、それがどのようなものなのかは定かではない。ブレゲの権威として名高い時計師ジョージ・ダニエルズの著書によれば、アブラアン-ルイ・ブレゲが1795年に永久カレンダーを考案したとあり、マリー・アントワネットの名で知られる歴史的に有名な超複雑時計「ブレゲNo.160」(1827年完成)にもそれは搭載されていた。グレゴリオ暦に基づき、現在に受け継がれる永久カレンダー機構の原型を考案したのはブレゲであったかもしれない。