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GMT機構 第4回「ワールドタイム Part.1」(1/2)

パテック フィリップ「Ref.515 HU」
24時間表示リングを世界24タイムゾーンに属す主要都市名に対応させる巧妙なワールドタイム機構は、ジュネーブの独立時計師ルイ・コティエが1935年に発明。パテック フィリップが1937年に製品化した初の腕時計「515 HU」は、世界の都市と地域の28の名がダイアルに刻まれ、ユニークな角型ケースを採用し、ワールドタイム・ウォッチの先駆けをなした。手巻き(Cal.10'''HU)。パテック フィリップ・ミュージアム蔵。
菅原 茂:文
Text by Shigeru Sugawara

 基本的に2つの時刻を表示するGMTウォッチは、ジェット旅客機による世界旅行が盛んになった1950年代半ばに本格的に実用化され、エアラインのパイロットや旅行者たちの間で人気を博すことになったのは、すでに述べてきた通り。これに対して、世界24タイムゾーンの時刻を同時かつ網羅的に表示する「ワールドタイム」が腕時計で実現したのは、GMTウォッチより遡ること20年も前の1930年代後半のことだった。

 1884年に開催された国際子午線会議で、世界を経度15度ごとに24分割し、GMTを基点としたタイムゾーン(時間帯)と標準時のシステムが制定されて以来、1つの時計で2つ以上の時刻を表示できる機構の開発に取り組むメーカーは少なくなかったが、サイズの限られた腕時計ではほとんど不可能に近かった。

 1930年代になって、この問題に決定的な解決をもたらしたのが、時計師ルイ・コティエとジュネーブの時計メーカー、パテック フィリップである。ルイ・コティエの発明とされる「ワールドタイム」の機構は、12時間で1周する通常の時計の外側に24時間で1週するリングを配置し、この回転リングに記された24時間の数字と世界24タイムゾーンに属す主要都市名を対応させることによって、各地の時刻をすべて同時に表示できるようにしたものだ。フランス語で「HU」(英語なら「ワールドタイム」)と名付けられた、パテック フィリップの腕時計は、1937年の「515 HU」を皮切りに数々の傑作を世に送り出し、ワールドタイムのまさにスタンダードを築き上げた。

 一般に“ルイ・コティエ方式”と称されるこのワールドタイムは、世界の時間に関する原理そのものはGMTウォッチと変わりないが、システムとして非常に優秀なのは、シンプルな回転機構で豊富な時間情報を提供する点である。24時間リングの回転は、太陽が1日をかけて世界の各都市を一巡するイメージに近い。それは、都市から都市へ時間の移り変わっていく様子を伝えながら、同時に一つの都市における1日の時間の推移も見事にビジュアル化している。

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