カレンダー機構 第1回「カレンダー時計」

FEATURE時計機構論
2019.05.05

 カレンダー表示における戦後のクラシックといえば、なんといってもロレックスの「デイトジャスト」に代表される、日付の数字を窓でデジタル表示するタイプである。ダイヤルの窓にデイト(日付)が表示される初の自動巻き腕時計「デイトジャスト」が誕生したのは1945年のこと。深夜12時に日付が切り替わる様子は「真夜中の奇跡」と評されたという伝説が残る。その仕組みは、12時間で1周する時針の歯車に24時間で1回転する歯車を組み合わせ、この歯車に付いた爪が日付リングの内側に並ぶ突起にかんで深夜ジャストに1日分先へと送る、つまり360分の31度を回転させるというもので、今ではどこにでも見られる設計だ。

ドイツ統一によって復活したA.ランゲ&ゾーネが1994年に初めて発表した「ランゲ1」のアイコンは、ドレスデンのオペラハウス、ゼンパーオパーに設置されているデジタル表示時計から想を得たアウトサイズデイト。2枚のディスクを組わせて日付を大きく表示するこの画期的な仕組みは、後にラージデイトやビッグデイトのブームを生んだ。

 ロレックスは続いて1965年に、デイト(日付)のみならず、デイ(曜日)もフルスペルで表示する(例えばMONDAY)世界初の腕時計「デイデイト」を発表した。1950年代から70年代にかけては、多忙な現代人の生活に役立つこのような日付や曜日表示に多くの時計メーカーが着目するところとなった。高度成長期にあった当時の日本でも、セイコーやシチズンがカレンダー表示を取り入れた腕時計を量産した。こうして、戦後の最も典型的な実用腕時計のスタイル、すなわちラウンドケース、自動巻き、中3針カレンダー表示付きが確立されてゆく。

 1990年代に機械式が本格的に復活すると、デイト表示に新たな1ページが加わることになる。ドイツのA.ランゲ&ゾーネが「ランゲ1」に搭載した「アウトサイズデウト」である。日付の1と10の位の数字を別々のディスクを組み合わせて表示する方式は以前にもごくわずかな例があったが、A.ランゲ&ゾーネの洗練されたメカニズムによる大型日付表示のデザインは他のメーカーに大きな影響を与え、「ラージデイト」や「ビッグデイト」と称される人気のトレンドを生み出した功績は見逃せない。